2009.12
子どものためのクリスマスコンサート
1. モーツァルト:ディヴェルティメント変ロ長調k.137(125b)
コンサート開始の合図とともに、照明が暗くなったと思ったら、ステージには、次々とカラフルで華やかな衣装を着た演奏者が続々と登場してきました。演奏だけでなく、視覚的にも華やかなステージは、クリスマスのイメージにピッタリでした。3楽章までの全曲演奏でしたが、楽章の途中で拍手が全く聞こえてきませんでした。「子どものため」のコンサートとしては、びっくりです。
楽器の紹介
ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスの順で楽器の紹介を兼ねて、子どもたちがよく知っている曲を少しずつ演奏してくださいました。特に、ヴィオラで「崖の上のポニョ」が演奏されたときには、客席から子どもたちの歌声も聞こえ、ホール全体がほのぼのとした雰囲気に包まれました。
2. パッヘルベル:カノン ニ長調
3. J.S.バッハ:エア~管弦楽組曲第3番ニ長調BWV1068より
4. J.S.バッハ:主よ、人の望みの喜びよ
この3曲の時には、特別に、子どもたちが20人くらいステージに上がって、演奏者の後ろで聴けるという企画が用意されていました。4. の演奏後、松原勝也氏が「座席とステージ上で聴くのと、どう違う?」と子どもたち一人ひとりにたずねたら、「(ステージ上の方が)音が大きい、振動が聞こえた」「座席よりもきれいに響いていた」「楽器の音が揃っていてすごかった」「よく音色が聞こえてよかった」「いろいろな音が出てよかった」「コントラバスの音の振動で足が震えた」等、みんなうれしそうに元気よく答えていました。
5. チャイコフスキー:「フィレンツェの思い出」ニ短調 op.70(弦楽合奏版)より第4楽章
最後のこの曲は、アドヴェント弦楽合奏団とともに、松原勝也氏、鈴木理恵子氏、川崎和憲氏、市坪俊彦氏、山崎伸子氏も一緒に演奏しました。1時間とはいえ、コンサートも終盤で、子どもたちの集中力が少々落ちる頃にもかかわらず、圧倒されるエネルギッシュな演奏に、一緒に聞いていた娘も、音の強弱、速さの違い、そして「やさしさ」に感動したようで、「素敵な曲だったね」と喜んでいました。
アンコールの「きよしこの夜」のときには、ステージ上のスクリーンにクリスマスツリーが映し出され、クリスマスの雰囲気をしみじみと感じさせてくれました。終演後、エレベータで降りているとき、「癒されたね」というお母さん同士の喜びの会話が聞こえてきたのも、この演奏と演出の効果からかもしれません。
子どもの心にストレートに響く本物の演奏。演奏者の近くで聴ける貴重な体験。親子で一緒に過ごす素敵な時間。きっと、多くの子どもたちにとってこのコンサートは、「クリスマスプレゼント」として心に残るコンサートだったと思います。
公演に関する情報
子どものためのクリスマスコンサート
日時: 2009年12月23日(水・祝)10:30開演
出演者:松原勝也/鈴木理恵子(ヴァイオリン)、川崎和憲/市坪俊彦(ヴィオラ)、
山崎伸子(チェロ)、 アドヴェント弦楽合奏団
演奏曲:
モーツァルト:ディヴェルティメント変ロ長調K.137(125b)
パッヘルベル:カノン ニ長調
J.S.バッハ:エア~管弦楽組曲第3番ニ長調BWV1068より
J.S.バッハ:主よ、人の望みの喜びよ
チャイコフスキー:「フィレンツェの思い出」 ニ短調 op.70 (弦楽合奏版) より第4楽章
ふたりでコンサートVI ~オペラの楽しみ~
お客さんの中にはやはり詳しい人、好きな人、マニアックな人が相当数含まれていたようで、開演前後や休憩中の雑談に聞き耳を立てていると、テクニカルな話や業界の内輪話に加え、前と比べて云々という話が耳に留まりました。また、別々に来ているお客さん同士が知り合い、ということも多かったらしく、「あらあお久しぶり」の声もちらほら。
二階席のお客さんは分かりませんが、ホールの規模が「最後列にいてもぎりぎり出演者と親しく話す感じになれる」というものだったので、ちょっと広めのサロンというか、そういう雰囲気で楽しめました。出演者、とりわけ三浦克次さんの話し方にもそれが表れており、友人と話すような、親しげな雰囲気がありました。お客さんもそうした気持ちなのか、拍手やMCへのリアクションには、よく知っている人に対する親近感があったように感じられました。リピーターが多いのでしょうか。ただしそれによって一見の客が阻害されたような感じはなかったので(MCも内輪ネタにならないよう気を配ってあったようで)、いい意味での親近感なのだと思います。
三浦克次さんと中鉢聡さんはいずれもMCの喋りが達者で、お客さんにもウケていたようです。男性はこういう場で声をあげて笑うことはあまりないので笑い声は女性が中心でしたが、一部の「何にでもけたたましく笑うおばさん軍団」だけが笑うのではなく、色々な場所から笑い声が漏れました。三浦さんと中鉢さんはイケメンなので女性が特に好意的なようでしたが、男性も笑顔でした。
とりわけ三浦さんのMCは「ユーモアもあるがあくまで上品な紳士」というキャラクターを完璧にこなしていて、「おっさん」ではない「おじさま」という人種を久しぶりに見たという感じです。いかにも面白いことを言っているという押し付けがましさがなく、面白いことを言うぞ、という気負いもなく、調子に乗ったり、逆に卑屈になったりもしない、見事に抑制のきいた話し方で凄かったです。あれを嫌いという人はまずいないのでは。いや個人的な感想ですが。
歌詞を舞台上部に映し出すのは、見た限りでは好評だった模様。後列からだと歌詞と歌い手の位置が離れすぎてしまいちょっと視線が移動しすぎるきらいがあるのですが、どちらにしろ歌詞と歌い手に同時に集中することはできないので仕方がないのかも。文字はよく見えました。
演奏については良し悪しを云々する能力がないのですが、聴いて「やはりプロだなあ」と頷かされる良さでした。曲の中では、第一部は(長いせいもあってか)〈人知れぬ涙〉、第二部は〈雨のロンド〉に若干大きな拍手が送られていたようです。〈雨のロンド〉の演出も皆笑っていました。〈四季の歌〉の中でポピュラーな歌が出てくると、ノッているお客さんがあちらこちらでゆらゆら動くのが見られました。個人的な感想ですが真横(しかも向こう側)を向いてもまったく声の響きが変わらない野田ヒロ子さんが凄かったです。
個人的にどうしても照明に目がいってしまうのですが、エフェクトマシンとかを舞台上にゴロゴロ直置きしてしても、他にピアノしかない舞台なら特に違和感ないのだなあ、と分かりました。歌い手が動いていないのにピンスポが揺れるのは気になりましたが。
終演後のお客さんの話も盗み聞きしていましたが、「よかった」という声がけっこう聞こえました。表情を見てもみな笑顔で、評判はいいのではないでしょうか。
公演に関する情報
〈ライフサイクルコンサート#45〉
ふたりでコンサートVI ~オペラの楽しみ~
日時: 2009年11月29日(日)15:00開演
出演者:野田ヒロ子(ソプラノ) 森山京子(メゾ・ソプラノ) 中鉢 聡(テノール)
三浦克次(バス・バリトン) 瀧田亮子(ピアノ)
演奏曲:
【第一部】声の饗宴-オペラの世界へ
モーツァルト:「フィガロの結婚」より「もう飛ぶまいぞ、この蝶々」
サン=サーンス:「サムソンとデリラ」より「愛の神よ、助けに来ておくれ」
ドニゼッティ:「愛の妙薬」より「人知れぬ涙」
ヴェルディ:「トロヴァトーレ」より「恋はばら色の翼に乗って」
ビゼー:「カルメン」より 闘牛士の歌「諸君の乾杯を喜んで受けよう」
プッチーニ:「蝶々夫人」より 花の二重唱「桜の枝をゆすり、花びらを敷き」
マスネ:「ル・シッド」より「おお、全能なる神よ」
ロッシーニ:「ラ・チェネレントラ」より「貴女ですね?」
【第二部】懐かしい名歌への誘い
四季の歌 メドレー 花(武島又次郎/滝廉太郎)~夏の思い出(江間章子/中田喜直)
~まっかな秋(薩摩 忠/小林秀雄)~雪の降る街を(内田直也/中田喜直)
岩河智子:雨のロンド
永 六輔/いずみたく:見上げてごらん夜の星を
アイラ・ガーシュウィン/ジョージ・ガーシュウィン:ザ・マン・アイ・ラヴ(私の愛した人)
シーザー/ガーシュウィン:スワニー
シュルツェ:映画「リリー・マルレーン」より「リリー・マルレーン」
ペニャロサ/フィリベルト:カミニート
ポーター:エブリタイム・ウイ・セイ・グッバイ(さよならを言うたびに)
レハール:オペレッタ「ジプシーの恋」より「ツィンバロンの響きを聞けば」
レハール:オペレッタ「ジュディッタ」より「私の唇にあなたは熱いキスをした」
J.シュトラウス2世:オペレッタ「ジプシー男爵」より「世界中を旅してまわった」
トゥルコ/デンツァ:フニクリ・フニクラ