クリスマスコンサート2008
このコンサートで演奏するアドヴェント弦楽合奏団は、オーディションにより選抜された弦楽セミナー受講生による合奏団。この合奏団の名前になっている「アドヴェント」とはキリスト教会でクリスマスを待ち望みろうそくに火を灯す幸福な期間だそうである。
受講生は、この期間コンサートのために講師の先生の暖かい指導の下、毎日リハーサルを繰り返して、クリスマスコンサートの日を迎えたように思います。日本中でベートーベンの第九交響曲が至るところで鳴り響き、合唱団が「汝の優しき翼の覆うところすべてのものは兄弟となる」なんて歌っている時、受講生の皆さんは第九での歌詞を引用すればバリトンソロが歌う「おお、友よ。この音ではない。もっと快い、よろこびに満ちた調べに声を合わせよう」という言葉をかみしめていたかも知れない。(勝手な推測です。)
アドヴェントセミナーの初日を少しだけ聴講してみると、とても緊張した感じで周りの状況を見ながら合わしているように思えた。休憩時間もみんな静かであった。初日の感想としては、今年はどんな風に変わっていくのだろうと思った。一週間後ホールの袖で聞いてみるとかなり完成度が高い。本番が楽しみだと思った。
今年、アドヴェントセミナーでの特徴は、聴講にいらっしゃる方が昨年まで比べると多かったこと。何回も聴講に足を運んで下さり、長い時間演奏を聞いて下さる方も多かったのではないだろうか。中には、「コンサート当日どうしても今年は来られないので今年は少し前に聞きに来た」といわれた方もいらした。
22日は、講師の先生と受講生による室内コンサート。23日は子供のための公開リハーサル。(残念ながら今年は聞けませんでした)そして、クリスマスコンサート当日。
クリスマスコンサートの第1曲目はメンデルスゾーンのシンフォニアで始まる。昨年は第6番で今年は第3番。共にメンデルスゾーン12歳の時の作品。今年の曲は友人のクリスマスプレゼントとして捧げた曲だそうである。
この曲は、受講生のみで演奏された。
気持ちの入ったきれいな演奏だった。昨年まではあまり意識していなかったので聞き逃していたのかも知れないが、今年は、全体の響きにはよく溶けている響きですがホールによく響く音が合奏団の何人かから聞こえてきた。なんだかこんな音を聞くとうれしくなってしまう。
2曲目は、グリーグの組曲「ホルベアの時代より」
この曲は、講師の松原勝也氏と受講生による演奏。曲の冒頭からテンションが高く、音にしなりがある。音の1音1音が生きている感じがする。
3曲目のバルトーク「弦楽四重奏曲第2番」は講師の先生方によって演奏された。
なんだかとても暗い曲。決して前の2曲のように聞き易くはなかったが、この曲の持つとても深い響きがあるように思えた。
休憩後、チャイコフキー「弦楽セレナーデ」これは、確か2004年に一度取り上げられた曲である。前回は、素晴らしい熱演で体が熱くなった記憶がある。今回も素晴らしい演奏だった。第1楽章の冒頭を聞いたとき、今回は少し渋めかなぁと思ったが、弾き込んでいくうち音が輝いてきて、響きの透明感が増し、呼吸も見事なまでに一つになっていた。演奏者だけでなくホール全体が一つになったようになったような気がした。こんな演奏は、1年に何回も出会えるものではない。演奏を聞きながら、昔、小澤征爾さんが時折言っていた「神様って本当にいるんだよね」という言葉を思い出していた。
アンコールは、山本祐ノ介編曲による「聖夜」。とても親しみ易い編曲できれいだった。
公演に関する情報
クリスマスコンサート2008
日時: 2008年12月24日(水)19:15開演
出演者:松原勝也/鈴木理恵子(ヴァイオリン)、川崎和憲(ヴィオラ)、
山崎伸子(チェロ)、アドヴェント弦楽合奏団
演奏曲:
メンデルスゾーン:弦楽のためのシンフォニア第3番ホ短調
グリーグ:組曲「ホルベアの時代より」op.40
バルトーク:弦楽四重奏曲第2番op.17 Sz.67
チャイコフスキー:弦楽セレナードハ長調op.48