林光・東混 八月のまつり27-創立50周年記念定期演奏会No.3-
報告:井出春夫(TANサポーター)/会社員/2階L2列-47番
投稿日:2006.08.18
客席でプログラムをみると、すべて聞いたことのない曲ばかりである。
「原爆小景」の演奏に先立ち作曲者で今回指揮をされる林光氏が「この曲は、あらゆる死者のために歌われるものでなければならない」と言われた。
曲が始まる。不安定な響きの中に「水を下さい」というとても悲しいメロディがはっきり聞こえてきた。曲を聞いていると、目の前に悲惨な光景が映し出されているようだ。
その後も、メッセージ性の高い言葉は、はっきりとしたメロディをつけたり、ナレーションに合唱を絡ませたりして聞く人に迫ってくる。そのうえ、ア・カペラで作曲されていることも音楽の緊張感を増しているのではないかと感じた。
正直言って、「原爆小景」という作品は、描写がとても生々しく、あまりにも聞いているにはつらすぎる。もうこの1曲で十分、思い気持ちを持ったまま帰路についてしまおうかという考えが頭をかすめた。
後半は、没後70年を記念してロルカという詩人の作品に林さんと寺嶋さん(後半のピアニストも務められた)が作曲された作品が演奏された。
演奏前に、林氏が、「ロルカという人は自分の詩の中で自分の運命を言い当ててしまう」と言うようなことをいわれた。
後半のプログラムが始まる。ロルカの詩もそこにつけられた曲も、前半の「原爆小景」に比べたら、あたたかくてきれいな曲である。でも前説を聞くと、本当はつらくて悲しいけど明るく振る舞っているんじゃないのなどと考えてしまうと、ちょっと複雑な気持ちになる。
後半は、組曲事にステージを照らすライトを変えていたが、その感じがそれぞれの曲によく似合っていたと思う。また、合唱も、基本的にはピアノの入った曲であっても、ア・カペラを基調とし、ピアノがサポートというような感じがとてもよかった。
個人的には「明日になれば」という曲が好き。
アンコールは、「明日になれば」と宮沢賢治詩・曲、林光編曲による「星めぐりの歌」
コンサートを通じ、どことなく重たい気持ちがふっきれなかったが、星めぐりの歌をきいていたら、とても癒された気持ちになった。
最後に東京混声合唱団の皆さんに感謝したい。余裕のある声量で、日本語の歌詞が明瞭に聞こえた。(日本語の言葉を上手く歌うのは、かなり難しいことです)とても素晴らしい合唱だと感じた。
公演に関する情報
〈TAN's Amici Concert〉
林光・東混 八月のまつり27-創立50周年記念定期演奏会No.3-
「フェデリコ、君の名前は歌だ-ロルカ没後70年を記念して」
日時: 2006年8月9日(水)19:00開演
出演者:林 光(指揮)、寺嶋陸也(ピアノ)、東京混声合唱団、古賀満平(照明)
演奏曲:
林 光:原爆小景(原民喜 詩)、
グラナダのみどりの小枝(ロルカ 詩)、
フェデリコ、君の名前は歌だ(加藤直 詩)-2006初演-
寺嶋陸也:イグナシオ・サンチェス・メヒーアスを弔う歌(ロルカ 詩/長谷川四郎 訳)