2005.5
ティーンエイジャーコンサート2005
~十代だって癒されたい!~
報告:24歳、大学院生 /1F 10列5番
投稿日:2005.05.14
高校生が演奏会を創り上げると云う趣旨の「ティーンエイジャーコンサート」は今回で2回目だそうである。第1回と同様、世界的ハープ奏者の吉野直子さんがソロ形式の演奏会を行うが、その企画・運営を高校生達が行うと云うものであった。
さて、高校生が企画・運営を行うことによってどのような意味があるか、と云う点である。私自身、高校~大学時代に所属していた吹奏楽やオーケストラで定期演奏会の運営を多く行ってきたし、今回この演奏会を支える高校生たちも、その多くが合唱部やオーケストラ部だと云うことで、同様の経験を有しているはずである。高校生に見慣れない裏舞台の経験をしてもらう、と云う趣旨は若干弱いと感じた。
しかしながら、彼らに尋ねてみると、やはり学校の定期演奏会とこのようなプロのコンサートというのは明快に違うとのこと。また、このコンサートでは、演奏はあくまで一流のものを提供する。「縁故の者が出演するアマチュアのコンサートには足を運ぶけれど、本格的なクラシックコンサートは堅苦しい」と云う人の少なくない中にあって(私の親や、友人の多くもそうである)、そのような人々が本格的な演奏会~素晴らしいクラシック音楽の世界~を、「気軽に楽しむ」為のアプローチとして、大きな効果があったのではないかと思う。
本演奏会では、クラシックが初めてと云う人でも楽しめるような工夫が、以下のとおり随所に盛り込まれていた。
バックステージ・ツアー:開演前に高校生スタッフが映像・照明機器や、楽器搬入口、楽屋の内部などを紹介する。案内する者とされる者の立場が非常に近い関係にあって、一方通行な説明ではなく、共感を覚える内容であった。
パンフ:通常の室内楽コンサートのちらしには見られない、元気いっぱいのデザインである。曲目解説はさすがに吉野さんが執筆しているが、これも高校生の感じたままを綴ってみると面白かったかもしれない。
第1部:第1部は「ハープ大解剖」と称しハープの構造をスライドで説明するのみならず、抽選で当たったお客さんが実際に弾く機会があったり、カメラで吉野さんの演奏している手元を拡大して映したりと、楽しめる要素がふんだんに盛り込まれていた。
第2部:第2部は「耳を澄ませて聞いてみよう」と云うテーマの下、高校生が提案したイメージに基づいて選曲が行われ、それに沿ってスライド等が映し出されたりした。スライドはどこか中途半端な印象を受けたのだが、特筆すべきは選曲を高校生が行う、と云うプロセスそのものである。普通の演奏会では、客受けの良い有名曲と演奏者側が演奏したい曲との折衷したプログラムになりがちであるが、ここにおいては若き高校生が純粋に支持するイメージを下に、リズミカルなものや、技術的に難度が高いけれども華麗な曲などが多く選ばれ、聴衆を全く飽きさせない構成になっていた。無論、演奏者である吉野さんの側に高校生の主張を何でも受け入れる包容力とレパートリーがあってこそ可能となった試みである。
ハープ独奏と云うのは普段オーケストラをやっている高校生達にとっても、新鮮な印象があっただろう。このような試みが今後も続くことを願ってやまない。
公演に関する情報
〈ライフサイクルコンサート15〉
ティーンエイジャーコンサート2005
~十代だって癒されたい!~
日時: 2005年5月14日(土)16:00開場 17:00開演
バックステージツアー(16:10~、16:20~)
出演者:吉野直子(Hrp)
演奏曲:
第一部「ハープ大解剖」
パッヘルベル:カノン
サルツェード:つむじ風
トゥルニエ:ジャズ・バンド
ルニエ:いたずら子鬼の踊り
ハチャトゥリアン:「トッカータ」より
映像を取り混ぜながら、ハープの秘密を探ります。
第二部「耳を澄ませて聴いてみよう」
シェ―ファー:アリアドネの冠
デュセック:ハープのためのソナタ変ホ長調 作品34-1 より、第3楽章
ワトキンズ:火の踊り
サルツェード:古代様式の主題による変奏曲 作品30 ほか
*ハープの豊かな響きを心ゆくまでお楽しみください