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トリトン・アーツ・ネットワーク

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アーティスト・インタビュー

LEO

ごほうびクラシック 第10回

 第10回を迎える「ごほうびクラシック」に登場するのは箏アーティストのLEO。インターナショナルスクールで箏と出会い、邦楽界の登竜門であるくまもと全国邦楽コンクールにおいて史上最年少で最優秀賞を受賞するなど、古典から現代に至る箏のレパートリーを学んだうえでLEOが挑むのは「今を生きる」作品たち。ピアニストのロー磨秀とともに、箏の新たな地平を開拓します。
[文:原典子(音楽ジャーナリスト)]

箏というと日本の伝統的な調べをイメージしますが、LEOさんのプログラムは宮城道雄やバッハから坂本龍一、ジャズ・シーンの最先端をいくピアニスト/作曲家のティグラン・ハマシアン、そしてご自身のオリジナル曲まで、独創性あふれる選曲ですね。

LEO:ここ1年ぐらい、全国各地のコンサートで演奏してきた曲たちで、すっかり身体に染み込んでいるレパートリーです。そのときどきによって異なる楽器編成、さまざまなアレンジで弾いてきましたが、今回はもっとも多く共演していて、プライベートでも仲の良いロー磨秀さんのピアノとのデュオ。お互いの即興的な部分も浮き出てくるような、息のぴったり合ったアンサンブルになると思います。

LEOさんはデビュー当時から箏でさまざまなジャンルの曲を演奏されてきましたが、最近は「箏演奏家」から「ひとりのアーティスト」へと、さらなる飛躍を遂げたように感じます。

20240622_MatthewLaw_(C)NipponColumbia.jpgLEO:そうおっしゃっていただいて嬉しいです。たとえばクラシックの曲を箏で演奏するとき、箏が旋律、ピアノが伴奏といった役割分担はちょっと違うなと感じていて。箏はピアノやギターと同じように、ひとりで旋律と伴奏を成立させるポテンシャルをもった楽器なので、あくまでほかの楽器と対等な立ち位置でアンサンブルがしたい。そんなことを思いはじめた頃に作ったのが、2023年にリリースしたアルバム『GRID//OFF』でした。それからは磨秀さんと演奏するときも、ピアノ伴奏の上に箏の旋律が乗っているときもあれば、箏の伴奏の上にピアノの旋律が乗っていることもあったりと、いろいろな立場でアンサンブルができるようになって、より楽しくなりましたね。

ご自身のオリジナル曲「DEEP BLUE」や「松風」からも、楽器の枠を超えた自由さを感じます。

LEO:「松風」では、宮城道雄の「春の海」とほぼ同じ調弦による古典的な"箏らしい"部分と、跳躍の多いフレーズや変拍子を用いた"箏らしくない"部分の対比をお楽しみいただけると思います。「DEEP BLUE」もはじめに即興があり、箏の古典で使われる技法を使ったセクションから、急に西洋的なメロディが登場して、変拍子へと至る構成になっています。

変拍子といえば、ティグラン・ハマシアンの「Vardavar」もすさまじいですね。

LEO:最初は大変でしたが、何度も演奏するうちにすっかり変拍子が身体に入って、僕も磨秀さんも暗譜で弾けるようになりました。箏に相性の良い曲を選ぶと、どうしても暗い響きの曲ばかりになりがちですが、「Vardavar」は思いっきり長調の明るい曲。途中にあるフリーの即興セクションでは、毎回違ったインスピレーションで演奏しています。

LEOさんのコンサートでは、ときにエフェクターやエレクトロニクスを駆使して、同じ曲でも毎回違うアレンジで聴かせてくれるのが楽しみのひとつですが、今回はどのようなアレンジを考えていますか?

20240622_LEO_(C)NipponColumbia.pngLEO:自分が飽き性なもので、毎回フレッシュな気持ちで弾けるよう、公演ごとに違った趣向を考えていますが、第一生命ホールは響きが素晴らしいので、基本的には生の楽器の音をそのままお届けしたいと考えています。そのうえで、今回のプログラムには自作曲も含めてミニマル・ミュージックの要素がつながりとしてあるので、たとえば「1919」ではそこを強調したアレンジでやってみたいと思ったり。一方で、同じ坂本龍一さんの「andata」では、ホールの音響を活かして、箏の消えゆく余韻を味わえるような静かなアレンジで対比をつけようかなというアイデアが頭に浮かんでいます。

ソロで演奏される宮城道雄の「手事」、バッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番より「アルマンド」でも、そんな響きの美しさが際立つでしょうね。

LEO:そうですね。箏は短い余韻に命が宿っている楽器なので、箏ならではの情緒を味わっていただけたらと。

最後に、「ごほうびクラシック」ならではの質問を。LEOさんにとって、毎日がんばった自分へのごほうびはどんなことですか?

LEO:最近、食べることが好きになって、すごく美味しいレストランに食べに行くことが、忙しい日々をがんばったときなどは、いちばんのごほうびですね。食べる量は多くないのですが、美味しいものを食べる瞬間に幸せを感じます。とくに好きなのがイタリアンと和食。素材の良さを活かしたお料理に感動します。

美味しいものを食べて、これからもがんばってください!