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トリトン・アーツ・ネットワーク

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アーティスト・インタビュー

横山幸雄(ピアノ)インタビュー

トリトン晴れた海のオーケストラ 第14回演奏会

「トリトン晴れた海のオーケストラ(晴れオケ)」の第14回演奏会「ベートーヴェン・ツィクルスⅡ」は、ピアノ協奏曲第2番が組まれている。ソリストは横山幸雄で、第一生命ホールでの“晴れオケ”との共演としては初登場。長年共演を重ねている晴れオケのコンサートマスター、矢部達哉の希望でこのコンチェルトが選ばれた。横山幸雄にその作品に対する思い、ベートーヴェンへの敬意と愛情、盟友である矢部達哉との交流などの話を伺った。

[聞き手/伊熊よし子]

「ベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番はチャーミングでかろやかで若々しい。その魅力を聴きとってほしい」(横山幸雄)

ベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番は、他の4曲のコンチェルトよりも演奏される機会が少ないのですが、横山さんはこの作品にどのような思いを抱いていらっしゃいますか。art_dl_image8_126©︎ZIGEN クレジット入り.jpg

横山:ピアノ協奏曲第2番は、とてもチャーミングでかわいらしい。もちろんベートーヴェンならではの力強さもありますが、全編に若々しさとかろやかさがあふれています。ベートーヴェンのピアノ協奏曲というと、多くの人は第5番《皇帝》のような輝かしく壮大な曲を想像しがちですが、第2番はそれとは異なる個性に彩られているため、ベートーヴェンらしくないと考えられてしまうのでしょうね。でも、僕は大好きな作品で、その魅力を聴きとってほしい。もっと演奏されるべきです。

横山さんは2016年に東京オペラシティ・コンサートホールでのベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲演奏会を晴れオケとの共演で実践していますが、そのときはどのような思いで演奏されましたか。

横山:僕は過去のことはすぐに忘れてしまうんですよ()。でも、リハーサルのことはよく覚えています、不思議ですよね。結構リハでは緊張するからかもしれません。みなさんは、本番の方が緊張すると思われるでしょうが、リハというのは全員が一致団結して音楽を作り上げていく、その方向性が決まるため、とても大切なのです。この全曲演奏会は、矢部さんとオーケストラのみなさんがとても真摯に情熱をもって演奏され、僕も非常に演奏しやすく、ベートーヴェンの神髄に迫った感じがしています。

C(演奏写真)(C)大窪道治_0K74442 クレジット入り.jpg

当時、お話を伺ったときには、最後になるに従い、みなさんが"ああ、もう終わってしまう、もっと弾いていたい"という気持ちになったとおっしゃっていましたが...。

横山:まさにそうでした。一日で休憩2回はさんで全曲演奏を行ったわけですが、最後の《皇帝》のフィナーレに近づくにつれ、全員が"この時間がずっと続けばいいのに"と感じたのです。番号順に演奏しましたが、第1番は壮大で後世のベートーヴェンのイメージにより近いものがあります。ご存知のように、第2番の方が先に作曲されましたが、出版が第1番の方が先に行われたため、この順番になったわけです。第3番は悲劇性に富み、ドラマティックです。第4番は円熟味が感じられ、繊細さと抒情性があふれています。そして第5番は光輝でスケールが大きい。カデンツァも各曲に特徴があり、第2番のカデンツァは作曲当時ではなく、晩年に書かれています。おそらく初演当時は、ベートーヴェンが即興で演奏していたのでしょうね。でも、晩年になって"勝手に弾かれてはならない"と考え、付け加えたのではないでしょうか。カデンツァの部分だけ、異色な感じがしますから。

横山さんはレパートリーの2大柱が「ショパンとベートーヴェン」と明言していますが、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番はその意味でどのような位置づけですか。

横山:ベートーヴェンのすべての作品に関していえることですが、自分の魂を書き残した作曲家だと思っています。偉大な名曲と称される作品は、ほとんどが耳の病が発症してから書かれています。ベートーヴェンは幼いころから神童と呼ばれましたが、モーツァルトやショパンとは人生が異なり、家族を養わなくてはならなかったり、戦争があったり、実際に作品が楽譜として世に送り出されたのはかなりあとになってからです。ただし、そのすべてが魂の叫びのようで、人間性が強く打ち出されています。そこに無性に惹かれるのです。もちろん、ショパンも別の意味で僕の心に響いてきます。IMG_1083 クレジット入り.jpg矢部さんとはもう長年のお付き合いですから、そうした作品や作曲家に対する思いはお互いに十分わかりあえています。最初のころはリハのときに少し話し合うことも必要でしたが、徐々に音楽だけで合わせられるようになりました。ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタなどを一緒に演奏するときは、僕がピアノで土台を作り、そこに彼の弦が自由に楽に乗れるようにしていく。コンチェルトになると、僕がオーケストラにポンと乗れるよう、矢部さんが好サポートをしてくれる。ですから、晴れオケのように指揮者なしでもまったく問題なく、自分の音楽が自由に演奏できます。矢部さんとの化学反応は最高です。

今後、矢部さんと晴れオケで、ぜひ演奏してみたい曲目は何でしょうか。

横山:ブラームスのピアノ協奏曲を2曲弾いてみたい。まだ弾き振りをしたことはありませんから未知数ですが、挑戦してみたいですね。まずは、今回のデビュー公演が楽しみです。