活動動画 公開中!

トリトン・アーツ・ネットワーク

第一生命ホールを拠点として、音楽活動を通じて地域社会に貢献するNPO法人です。
Menu

アーティスト・インタビュー

クァルテット・インテグラ 三澤響果(ヴァイオリン)、山本一輝(ヴィオラ)

大躍進のクァルテット・インテグラ
2年目の「3大B」

 三澤響果・菊野凛太郎(ヴァイオリン)、山本一輝(ヴィオラ)、築地杏里(チェロ)で構成されるクァルテット・インテグラは、国内外で数々のコンクール受賞歴を誇る、今とても勢いのある若手のアンサンブルです。彼らはいま、ベートーヴェン、ブラームス、バルトークという「3大B」の弦楽四重奏曲第1~3番を3年がかりで演奏する、というユニークなシリーズを第一生命ホールで進行中。3人の弦楽四重奏曲のそれぞれ第2番が演奏される2年目の公演を前に、三澤響果さんと山本一輝さんにお話を伺いました。
[聞き手/文:越懸澤麻衣(音楽学)]

シリーズ第1回の成功、おめでとうございました。素晴らしい演奏でしたし、お客様からの反響も大きかったですよね。みなさんにとってはどのような印象でしたか?

山本:最初に思ったのは、大変なことを始めてしまったな、ということ。それでもやりがいはあるし、大変なことをやるのは好きなので、他の人たちがやろうとは思わないような良い企画をやらせていただいているなと思います。

三澤:私は前回のコンサートが、これまでいろいろなクァルテットの演奏会をやってきたなかで一番大変でした。1、2、3番とどんどん大変になっていくのかと思いきや、1番が重すぎて......(笑)とくにベートーヴェンの第1番はもっと軽いものだと思っていたのですが、ぜんぜんそんなことはなくて。1番といってもそれぞれの作曲家でまったく違うということがわかりましたし、同時にやるというのは大事なのだなと感じました。20240127QuartetIntegra_Interviw_IMG_0240.jpg

前回の第1番は3曲とも、それまでに弾いたことのないレパートリーだということでしたものね。第2番はいかがですか?

三澤:バルトークとブラームスの第2番はこれまでに勉強したことがありますが、そのときから時間も経っていますし、新たな発見があるのではないかと思っています。とくにブラームスの第2番は、以前演奏したときは不完全燃焼だった記憶があるので、第1番を取り組んだ後に勉強することで、より掴めるような気がしています。

山本:僕らにとってはブラームスが断トツで一番難しいよね。やはりキャパシティーの大きさみたいなものがないと、ブラームスの音楽は抱えきれないから、かな......。


第1番と第2番では、作風は変化しているように感じますか?

山本:一番変化が大きいのはバルトークです。バルトークの第1番にはいろいろな要素が入っていて、まだ"バルトークのスタイル"という感じではありません。ベートーヴェンへの憧れがすごく感じらますし。それが第2番になると、他の作曲家にはないものが現れてきて、彼の世界観がかなり成立している気がします。とくに第3楽章が特別です。一般的な4楽章構成ではなく、あれで終わるというのが"ミソ"ですね。


20240127QuartetIntegra_(c)DanielDelang.jpgみなさんはクァルテットを結成して8年くらいが経ちますよね。最近はどのように練習を進めているのですか?曲の解釈についてじっくり話し合ったりしますか?

山本:すごく話し合うということはないですね。話し合うということは、話さないと伝わらないときですから。話したり試したりせずに変わっていく部分の方が、大事かもしれないと思います。

三澤:長く一緒にクァルテットをやってきて、予め決めることが必ずしも良いことではないということが分かってきました。結局決めていても、ステージの上に立ったときに"こう弾く"という流れが来るときがあるし、それを一緒に感じられるようにリハーサルしている感じです。


アメリカでの生活は2年目になりますが、これまでで何か印象に残っている出来事はありますか?

山本:今年の8月、初めてサンディエゴの音楽祭に1カ月間フェローシップ・アーティストとして参加してきました。ホームステイだったのですが、大金持ちの豪邸でほんとうにすごかった(笑)。その間、70人くらいのアーティストに会うことができて良い経験でした。

三澤:アメリカの聴衆の反応がすごかったですね。たとえば休符の前にピツィカートを弾くところで、"ワ~オ"みたいな声が上がったりして。カジュアルにクラシック音楽を楽しんでいる感じですね。良い悪いではなく、文化の違いを感じました。


アウトリーチ活動も積極的に行っているそうですね。

山本:とくにベリンハムのアウトリーチはすごく良かったです。だいたいは僕たちが弾いて、その後にQ&Aがあって、という感じですが、高校生たちにレッスンをすることもあり、教えるのは初めてでしたが感動的でした。

三澤:最後の演奏会では、私たちが教えたことをほんとうに自分に落とし込んだ上で、高校生たちが"こう弾きたい"と演奏しているのがストレートに伝わってきました。私たちも本番前だったのに号泣してしまって......。とても嬉しかったです。


20240127QuartetIntegra_Interviw_IMG_0236.JPGでは最後に、今後の活動の目標を教えてください。

山本:ジャパン・アーツ(音楽事務所)に所属し活動できることになり、日本での演奏会をまとめて行えるようになるので、そのぶん海外で活動をもっと広げたいというのが目標です。

三澤:まずはアメリカで演奏機会を増やしたいですね。私は"アメリカ"という1つのイメージがありましたが、場所によってぜんぜん違いますし、アメリカをもっと見てみたいなと思っています。