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トリトン・アーツ・ネットワーク

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アーティスト・インタビュー

東京メトロポリタン・ブラス・クインテット(高橋敦&西條貴人)

ごほうびクラシック 第6回

 晴ればれと、美しく!――オーケストラや吹奏楽でも華やかな活躍を魅せるブラス(金管楽器)のサウンドは、愉しくも鮮やかに、心を動かしてくれます。
 そんな花形が5人集まった、ブラス・クインテット(金管五重奏=トランペット2人、ホルン、トロンボーン、テューバ)の彩り豊かな音楽を、美しい響きのホールで堪能するチャンス‥‥《ごほうびクラシック》Vol.6(9月10日)には、〈東京メトロポリタン・ブラス・クインテット〉の皆さんをお迎えします。
[聞き手・構成:山野雄大(音楽ライター)]

◆素晴らしい音楽の力!《ドラゴンクエスト》の素晴らしさ

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 このクインテット(五重奏)は、トランペットの高橋敦さん&中山隆崇さん、ホルンの西條貴人さん、トロンボーンの小田桐寛之さん(この4人は〈トリトン晴れた海のオーケストラ〉メンバーとしてもおなじみ!)に、テューバの佐藤潔さんという素晴らしい名手揃い。
 5人全員が名門オーケストラ・東京都交響楽団の豊かなサウンドを支える精鋭プレイヤーとして活躍中ですが、皆さん多忙なオーケストラ活動の合間をぬって、五重奏としても全国で公演を開催。バロック音楽からタンゴ、ジャズまで幅広いレパートリーで人気を博しています。
 今回のコンサートでは、「クラシック×ドラゴンクエスト」と題して、金管五重奏のオリジナル曲から人気ゲーム音楽まで、金管楽器の多彩な魅力をお楽しみいただきます。

 前半はクラシック音楽、そして後半はゲーム音楽《ドラゴンクエスト》(すぎやまこういち作曲)から、金管五重奏ヴァージョンに編曲された4曲をお届けします。
 ゲームをやったことがないかたでも、聴けばそれと分かる‥‥というくらい、どこかで耳にする機会も多いのが《ドラゴンクエスト》の音楽。耳に残る印象的なメロディ、そこから広がる壮大なイメージ‥‥と、音楽の力を磨きぬいたような凄い曲ばかりです。

 作曲は、すぎやまこういち(1931~2021)。生前、〈東京メトロポリタン・ブラス・クインテット〉の皆さんが所属する東京都交響楽団とも縁が深く、都響を自ら指揮して《ドラゴンクエスト》オーケストラ版の壮大なサウンドを響かせるコンサートも、大人気を博してきました。

高橋敦(トランペット):すぎやま先生はもの凄い博学で、趣味も多彩。美食や旅行、カメラ、それにもちろんゲームも大好きでいらっしゃった。おかげで僕らも愉しいことをたくさんご一緒させていただきました。

西條貴人(ホルン):僕はもともとゲームが好きだったので、先生に初めてお会いした時は「目の前に神様がいる‥‥都響に入れて良かった!」と嬉しかったです。《ドラゴンクエスト》の音楽は、最初にファンファーレが鳴る‥‥そこから気分がとにかくあがるんですよね。大学の頃、このゲームを始めてあれを聴くとわくわくして、もう学校に行きたくなくなっていました(笑)。《ドラゴンクエスト》というゲームの世界観にばっちり合った音楽なんです。

高橋:作曲される前、最初にゲームのコンセプトとして《中世の騎士物語》と言われた先生は、すぐにワーグナー[中世の騎士が登場するオペラなど多数書いたドイツの作曲家]の世界観が浮かんだそうです。そこから、《ドラゴンクエスト》もクラシック的な音楽でいこうとされたそうです。〈序曲〉は5分で出来た、と仰ってました(笑)

西條:すぎやま先生が書かれたゲームの音楽も、最初からオーケストラをイメージして作曲されている、というのが聴いて分かるんですよね。あとで先生にお伺いすると、やはりフル・オーケストラの音を少ない声部に凝縮して書かれているんです。


◆作曲家おすみつきの《ドラクエ》金管五重奏ヴァージョン

20230910_SaijoTakato_interview.JPG西條:ゲームをやっている人も、サウンドトラック盤が聴きたくなる音楽なんですね。ゲームをやっていない時でも、この音楽を聴いていたい‥‥という魅力がある。こういうゲーム音楽はなかなか無いんじゃないでしょうか。新しい《ドラゴンクエスト》のゲームが出ると、『新しいドラクエの音楽、都響はいつ演るの?』って聴かれるようになりました(笑)

 クインテットのメンバーは全員、すぎやまこういち自身が指揮する《ドラゴンクエスト》を演奏して、作曲家直伝の解釈を知り尽くした人たち、というわけです。

高橋:すぎやま先生は指揮者としても本当に素晴らしかった。ご本人は「いやいや、皆さんが音楽を全部作って下さるから‥‥素人の指揮でごめんなさい」と仰ってましたが、全然そんなことはないどころか、全ての指示が的確な指揮から良い音が引き出されていました。コンサートの中でベートーヴェンやブラームスを指揮されたこともあるんですが、やはりもの凄く素晴らしい音がするんです。都響の全員が、先生のことを大指揮者だと思っていたし、《ドラゴンクエスト》のコンサートは出番の取り合いでした(笑)

 そんな名作《ドラゴンクエスト》の音楽を、〈東京メトロポリタン・ブラス・クインテット〉ではトロンボーンの小田桐寛之さんと高橋敦さんのお二人が、金管五重奏版に編曲したヴァージョンを演奏して、全国で大人気を博してきました。

西條:ドラクエを聴きたい、と期待していらっしゃる皆さんが喜んで下さるのがとても嬉しいですし、ホルンのこともちゃんと考えてくれた編曲で(笑)美味しいところも吹かせてくれるので、信頼しています。

高橋:[生前の]すぎやま先生はこの編曲をご覧になって、「自分ではこんなことは書けない」と仰っていました。「演奏者にこんなに大変なことをさせる編曲は、僕にはとても書けない‥‥よくやるわ‥‥」って(笑)。ただ、すぎやま先生の曲はハーモニー[和音]が厚いことも多いんです。音の数が、5人で吹くより多いくらい厚い場合は、どの音を減らすとオーケストラっぽく聴こえるか、どの楽器に割り当てればよいか‥‥など考えて編曲しなければなりませんでしたが、先生はとても気に入って下さっていました。


◆5人でなければならない理由

 ところで、この〈金管五重奏〉という楽器編成ですが‥‥

20230910_TakahashiOsamu_interview.JPG高橋:弦楽器のアンサンブルなら〈弦楽四重奏〉[ヴァイオリン2人、ヴィオラ、チェロ]が基本になりますが、金管楽器ならこの〈金管五重奏〉がアンサンブルの要になります。

 なぜ金管楽器の場合、四重奏ではなくて五重奏がベースになるのでしょうか。

高橋:四重奏の曲もあるんですが、金管楽器の四重奏だと、誰か一人が吹くのを休むと、残りが3人だけになってしまうんです。それでは負担が重くなってしまうので、[最低音の]テューバを入れて5人が基本の編成になります。

 息継ぎなしで、長い音でも弾き続けられる弦楽器と違って、金管楽器は必ず息継ぎ(ブレス)が必要になります。ですから、音楽が美しく流れてゆくためにも、交替で短い休みを入れていかなければいけない、というわけですね。

高橋:これを弦楽四重奏に当てはめて考えると‥‥、ヴァイオリン2人が、金管でいうトランペット2本にあたります。ヴィオラと、大変音域の広いチェロの両方を、金管ではホルンとトロンボーンが受け持ちます。チェロの低音にあたるところを、金管ではテューバが担当している。‥‥という風に、音域をミックスして担当していますから、金管の場合は5人じゃないと上手くいかない。

西條:派手な部分はトランペットとトロンボーンが演ってくれるので、僕のホルンは少し柔らかい部分でメロディが来ることが多いですね。中和するというか、響きが一辺倒にならないようにしているところも、あるのかも知れません。‥‥ただ、ぶっちゃけて言うと、金管五重奏というのはトランペットのものですから(笑)。

高橋:いやいやいや!(笑)


◆金管五重奏から愛をこめて

高橋:しかし、楽器を吹くかたにも金管五重奏はぜひ演っていただきたいですね。ただ、金管十重奏とかのほうが、人数が多いぶん責任がバラけるので(笑)楽しい曲も多いんですが、金管五重奏は難しい曲が多くて‥‥

 吹くのが難しい曲のほうが、聴いているほうは一層わくわくしたりするものですが、今回のコンサートで最初に演奏していただく、現代イギリスの作曲家デリク・ブルジョワの〈金管五重奏のためのソナタ〉Op.21は、聴いて楽しい反面、吹くほうには大変だそうで。

高橋:金管五重奏のオリジナル曲で最も難しいと言われる曲で、テクニック的にも音楽的にも、アンサンブルをつくるのも本当に大変! このクインテットはもう20年以上やっていますが、チャレンジし続けていたいとこの難曲を選びました。ドラクエを聴きにいらした皆さんも『金管五重奏って大変な曲があるんだなぁ!』と愉しんでいただければ(笑)。

 ブルジョワ作品にあわせて、ヨハン・ゼバスティアン・バッハのオルガン小曲集から《平和と歓喜もて、われは今》BWV616(高橋敦編曲)と、ウクライナ民謡《夢は窓辺を過ぎて》(同編曲)もお聴きいただきます。

高橋:コロナ禍や戦争が続く世の中、僕らにできることは、平和を願って、いずれまた幸せが戻ってくることを思って音楽をするしかない。今回、後半の《ドラゴンクエスト》も、《序曲XI》に続いて《愛の旋律》《のどかな家並》《大聖堂のある街》と、安心できる故郷を思わせるような選曲にしています。

 ブラス・クインテット――金管楽器5本が、その歌とハーモニーを美しく融け合わせる、その幸せなサウンドで、古典から現代のゲーム音楽まで、幅ひろい楽しみを満喫していただけるコンサートになります。

西條:このクインテットは、オーケストラで吹いているときと何か変える、という必要がない5人。いつもと同じように出来るんです。

高橋:とにかく5人が仲良くて(笑)

 と、お話の尽きないところですが、息の合った仲間たちがコンサートで繰り広げる、目覚ましくも美しい音楽の時間‥‥どうぞお楽しみに。

《ごほうびクラシック》というシリーズ名にちなんで、高橋さんと西條さんにとってのリラックス方法や、自分へのごほうびを教えていただきました!

西條:僕はスイーツですね。色々な所でパフェとか、パンケーキとか、フルーツの盛り合わせとかを食べています。

高橋:パフェと言えば、最近札幌ではお酒を飲んだ後にラーメンではなくパフェで締める、「シメパフェ」が流行っていますね。

西條:それ専門のお店もあるんですよ! それから、スイーツはいま名古屋が凄いです。どのお店も色んな工夫をしています。

高橋:久しぶりに休みを取ったときは映画を観ます。最近だと『トップガン マーヴェリック』とか、絶対に映画館で観たいものは行く日を決めてその日は絶対に仕事を入れない(笑) 
普段はNetflixをiPhoneにダウンロードして、飛行機とか新幹線で観ています。
最近のおススメは、相撲ドラマ『サンクチュアリ-聖域-』。門司港出身の不良が横綱を目指す話で、面白かったです。