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トリトン・アーツ・ネットワーク

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アーティスト・インタビュー

ⓒ大窪道治

蒲生克郷

クァルテット・ウィークエンド2011-2012
エルデーディ弦楽四重奏団~アマデウス・クァルテットへのオマージュ~
蒲生克郷(ヴァイオリン)に聞く

2月のSQW(クァルテット・ウィークエンド)では、エルデーディ弦楽四重奏団が、「アマデウス・クァルテット(以下、アマデウスQ)へのオマージュ(追憶、敬意)」と題した公演を行います。結成初期にイギリスでアマデウスQの薫陶を受けたエルデーディ弦楽四重奏団がおくるオマージュとは…?

いつかオマージュという形で演奏会をしたいと思っていました。

今回の公演のテーマを選んだのは?

蒲生:アマデウスQは、20世紀の弦楽四重奏の世界に偉大な足跡を残したすばらしいクァルテット。私たちエルデーディ弦楽四重奏団は、約20年前ロンドンで彼らに師事し、日本でも講習会を受けましたので、いつかオマージュという形で演奏会をしたいと思っていました。

イギリスの作曲家ベンジャミン・ブリテンの弦楽四重奏曲第3番は、アマデウスQによって初演された作品です。

蒲生:アマデウスQ4人のうち3人が亡命オーストリア人ですが、イギリスを拠点に活動し、ブリテンとも親交が厚かったのです。今回演奏する弦楽四重奏曲第3番は、ブリテンが亡くなる前年に書かれました。ブリテン自身は、練習は立ち会ったものの、残念ながら初演の前に亡くなってしまいました。アマデウスQにとって縁の深い曲で、彼らも何度も演奏しています。小品が並んでいるような特徴的な曲ですね。性格が際立っていてとても印象的。第5楽章はブリテンが終生愛し、またこの曲が作曲されたヴェニスをテーマに書かれており、聖堂の鐘の音等も聞こえてきます。ぜひ生で聴いていただけたら。先頃とあるコンサートでこの曲をとりあげたのですが、多くの方に「聴けてよかった」と言っていただきました。

他の2曲をプログラムに入れた理由を教えてください。

蒲生:ハイドンは、「エルデーディ(ハイドンの弦楽四重奏曲集の1つ)」の名のとおり我々の出発点という事もあり、常に演奏したいと思っています。この作品9はハイドン初期のもので、彼が初めて4楽章形式で書いた、弦楽四重奏曲の画期的な曲集です。
シューベルトの弦楽四重奏曲第13番「ロザムンデ」は、ホームコンサートなどの内輪向けではない、大きな規模をもった初めての作品で、シューベルトの室内楽の中ではひとつのモニュメントになる作品。これもアマデウスQへのオマージュになるか分かりませんが、彼らがブリテンの弦楽四重奏曲を演奏する時に、よくシューベルトの室内楽曲と一緒に組み合わせて演奏していました。

アマデウスQの教えで、印象的なことはありますか。

蒲生:これはいわゆるウィーンで育まれていった音楽についてですが、「ウィーンにはたくさん音楽家がいたが、例えばハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンにしてもウィーン出身ではなく、ウィーンの音楽の伝統を作ったのは外から来た音楽家だ。だから日本人であるお前たちにも、きっと理解できるはず」とおっしゃっていたのを、今でも時々思い出します。

[聞き手/文 田中玲子]