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トリトン・アーツ・ネットワーク

第一生命ホールを拠点として、音楽活動を通じて地域社会に貢献するNPO法人です。
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レポート

基本情報

日時 2018年9月14日(金)13:15~13:55(40分間)
出演 中井智弥(二十五絃箏・箏・三絃演奏家・作曲家)
概要 実施会場:マイホーム新川 2階食堂
対象者・人数:通所者40名程度+入居者数名

レポート

【プログラム】

♪百々花火(中井智弥作曲)
♪お祭りマンボ(原六朗作曲)
♪木遣りくずし(端唄)
♪とんがらし(小唄)
♪かっぽれ(俗曲)
♪枯葉(J.コズマ作曲)
♪赤とんぼ(山田耕筰作曲)
♪紅蓮の炎(中井智弥作曲)

【レポート】

「マイホーム新川 敬老祭」と書かれた横断幕、立派な活け花、紅白幕が飾られ、今日は敬老の日記念コンサート。食堂でコンサートの準備をしていると、敬老の日のお祝いということで、豪華なお重入りのお弁当が出されていました。

★IMG_1799.JPG ちょうどお腹が一杯になったところで音楽を聴くと、つい、うとうととなる人が多いのでは、とちょっと心配しましたが、全くの杞憂でした。

 今日は、演奏者の中井智弥さんが、二十五絃箏、箏、三味線の3つの楽器を演奏しますとのことでしたが、観客の何人かは、箏を弾いたことがあるそうです。

★IMG_1801.JPG地元隅田川の花火が有名なこともあり、中井さんはまず自作の「百々花火」を箏で演奏しました。色とりどりの花火が次々上がっては消えていく姿が目に浮かぶ演奏に、客席からは早くも、「わぁ、すごい!」、「ステキ!」という声があちこちから上がりました。

 次は美空ひばりのヒット曲「お祭りマンボ」。とても調子のいい曲で、最初から最後まで手拍子をしながら歌っておられる方もいらっしゃいました。

 中井さん、今度は三味線を手にし、端唄の「木遣りくずし」を何とも艶っぽく歌い出すと、その場の空気が一変しました。

 ★IMG_1807.JPG続いて、小唄「とんがらし」というお座敷芸の曲を皆さん一緒に歌いましょう、と声を掛けます。細かな節回しが必要で、最後の「紫蘇――の――は」の「は」は、芸子さんがお客さんの耳元でそっと息を吹きかけるように囁くのがポイントだそうです。皆さん、節回しや最後の囁きをすぐに自分のものにして、一緒に歌っていました。 

この後演奏された「かっぽれ」でも、あちこちから歌声が聞こえ、江戸の下町文化が根付いた地域で生まれ育った方が多いのだなと、実感させられました。

ここで客席から突然、「端唄と小唄の違いって何?」という質問が飛んできましたが、中井さんは、それぞれの違いについて説明されたあと、「厳密に言うと違うが、どちらも『お座敷歌』と呼んでいる」と仰っていました。

★IMG_1824.JPG そして、いよいよ二十五絃箏の演奏です。これは30年ほど前に誕生し、音域が広く西洋音楽の「ドレミ…」で調弦されているため、邦楽のみならずさまざまな分野の楽曲演奏が可能だそうです。中井さんはこの楽器を演奏できる数少ないプレイヤーです。

 まず、ジャズの名曲「枯葉」が演奏されました。中井さんから、箏のような減衰楽器は枯葉がヒラヒラと散る光景にぴったりだという説明がありました。お座敷三味線からジャズへの場面転換も見事でした。続いて、誰もが知っている「赤とんぼ」は、前半を4拍子に変えるなどしゃれたアレンジで、箏の柔らかな和の音色とポップ感の融合が不思議な世界を作っていました。そして最後に、オリジナルの「紅蓮の炎」というオリジナル曲が演奏されました。アップテンポの曲ですが、途中、絃を指で長くこすったり板の部分を叩いたり、さまざまな技法を駆使し、迫力ある演奏はみんなを最後まで飽きさせませんでした。

 全体を通じて、今回聴かれた皆さんと箏や三味線といった和楽器演奏の距離感がとても近く、心底楽しまれていることが強く感じられるアウトリーチでした。

(サポーター 関谷匡 観察レポートより)

プロフィール

中井智弥(二十五絃箏・箏・三絃演奏家・作曲家)  Nakai Tomoya,(Koto – Samisen (Ikuta Style) | 25-String Koto Musician, Composer)
6歳の時に箏と出会う。東京芸術大学音楽学部邦楽科卒業。
伝統的な箏や地歌三絃の演奏も行いつつ、音域を広げた「二十五絃箏」の演奏をメインに活動。神話・日本の古い文学作品・能等を題材に新しい感覚で作曲し、様々なジャンルとコラボレーションを行っている。
Eテレにて「おかあさんといっしょ」「花鳥風月堂」等に出演。2014年ソロアルバム「INFINITY」、2015年「TRADITIONAL」をリリース。2016年三重県文化奨励賞受賞。
海外公演においては、2007年国際交流基金海外公演主催事業「メキシコ移住110周年事業、日チリ修好 110周年事業」でメキシコ・チリ・ドミニカ共和国を巡演し賞賛をうける。また外務省より文化使節としてタイ・ベトナムに派遣され、日メコン交流年オープニングイベントを飾る。帰国後、総理官邸にてベトナム書記長との晩餐会で凱旋公演を行い賞賛を受ける。 2013年在エストニア日本大使館主催でエストニア三都市を巡演。2014年国際交流基金ニューデリー日本文化センター主催でニューデリー、ラクナウ、グワハティを巡演。2015年国際交流基金主催事業で、フランス・イタリア・スペインを巡演。2015年芸歴30周年を記念し、東京、アメリカ、リトアニア、スゥェーデン、フィンランド、スイス、ポルトガルでリサイタルを開催(在日本大使館主催)。