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トリトン・アーツ・ネットワーク

第一生命ホールを拠点として、音楽活動を通じて地域社会に貢献するNPO法人です。
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アーティスト・インタビュー

後列左より、吉田有紀子、大友 肇、山本 周(Zoom参加) 前列左より、粟津 惇、西野ゆか、東條太河、矢部優典

クァルテット・エクセルシオ×レグルス・クァルテット

日本を代表するクァルテット“エク”が、次世代クァルテットと共演
期待の俊英“レグルス・クァルテット”を迎えて

 常設のクァルテットとして多くの後輩から目標とされるクァルテット・エクセルシオ(以下エク)が、これからの活躍が楽しみな次世代クァルテットと共演するシリーズ。7回目となる今回の若手団体は、2020年結成、今注目の精鋭4人からなるレグルス・クァルテット(以下レグルス)です。レグルスは、ウェールズ弦楽四重奏団が第一生命ホールで開催しているウェールズ・アカデミーの第1期生でもあり、エク、ウェールズと日本を代表するクァルテット2団体から熱い期待を寄せられる存在なのです。
 インタビューには、エクからは、西野ゆか、粟津惇(ヴァイオリン)、吉田有紀子(ヴィオラ)、大友肇(チェロ)の4人、レグルスからは、東條太河(ヴァイオリン)矢部優典(チェロ)のほか、山本周(ヴィオラ)が地方からオンライン会議で参加、計7人が集いました。
[聞き手/文:田中玲子(トリトン・アーツ・ネットワーク)]

エクが若手団体と共演するシリーズも7回目を迎えます。今回レグルスを選ばれた理由から伺えますか。

大友:若手のクァルテットを応援したいという企画ですから、クァルテットとして活動している団体という点で選択肢はそんなに多くないわけです。継続して活動している団体は見ていて分かりますから、そういう方たちに出ていただきたいと今回はレグルスに声をかけました。クァルテットを続けるのは本当に大変なことです。この企画は、公演の1年半くらい前に出演を打診することになりますが、まず「1年半先まで自分たちはクァルテットとして活動しているか」と考えると思うんですね。そこで「やります」と返事が来たら、「お、やるんだな」と(笑)。
東條・矢部:(うなずく)
西野:私はミュンヘン国際コンクールに出場していた時の動画を見ていて、印象に残っていました。


「選択肢が多くない」というのは、本気でクァルテットをやっている若手と共演したいという、つまりポジティブな意味なのですね。レグルスとしては、依頼が来ていかがでしたか。

矢部:このシリーズについてはもちろん知っていましたので、7回も続く企画に誘っていただけたのはとてもうれしかったです。確かに公演が入ると、そこまで頑張る目標ができますね。


20260307Regulus Quartet_(C)T.Tairadate_Interview.jpgレグルスは結成が2020年ですから、もう5年続けているわけですね。

矢部:そうです。ちょうどコロナ禍の頃、サントリーホール室内楽アカデミーのオーディションを受けるために集まったんです。
東條:アカデミーの時期は、週に4回くらい集まってずっと合わせていました。
矢部:家族より誰よりこの4人で会っている時間が長かったです。
大友:今はどれくらいの頻度で?
矢部:ここ1年くらいで4人とも急に環境が変わりまして、なかなか予定が合わないんです。僕と東條君のNHK交響楽団の試用期間が1年以上あって、それが終わって2人とも正団員になったタイミングで、吉江さんが東京交響楽団(コンサートマスター研究員)の、山本さんがオーケストラ・アンサンブル金沢(首席)の試用期間に入って......。
山本:このエクさんとの公演の期間は休ませてもらうことになっていますが、オーケストラの半年間すべての公演に乗ることになっています。ですから、なかなか皆で会えず、集まれる時に集中的に合わせて本番をしています。
西野:第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンは、吉江さんと東條さんが交替で弾いていましたよね。
東條:最近は僕がほとんど第2ヴァイオリンを弾いています。
山本:2人が全然違うタイプのヴァイオリニストなので、交替すると2つの違うクァルテットで弾いているような感じにもなるんですね。今は、吉江さんが第1ヴァイオリンでうまくいっているのかなと。


20260307Excelsior_(C)OkuboMichiharu_Interview.jpgエクの近況はいかがですか。7月から第2ヴァイオリンに粟津さんが入られたところですね。

粟津:この中で(クァルテット弾きとしては)誰よりも新米ですね(笑)。とにかく(他の3人と)同じ目線に立てるように、と必死で、あっという間の3か月でした。昨年(2024年)まで東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団に在籍していて、大友さんとは同僚でした。
大友:オーケストラで一緒に弾けなくなって寂しさもあったところに、たまたまメンバー交代の話がありまして。こういう話は、タイミングもありますよね。彼が室内楽を大事に思っていることも知っていたので、声をかけました。
西野:おかげさまで、今大変充実しています。
吉田:楽しいですね。結成以来、男性は大友さんだけでしたが、初めて男女2人ずつになってパワーも出て。彼はオーケストラの経験もあり、色々なアンテナを持っていますね。


レグルスの皆さんもそれぞれお互いの紹介をしていただいてもいいでしょうか。今日は残念ながら参加できなかった吉江さんについてから伺いましょうか。

東條:合わせで1回弾き終わると、まず話すのがだいたい吉江さんです。いい意味で問題提起して、意見もはっきり言ってくれるので、そこから議論が始まって、良い方向にいくきっかけになることが多いですね。
矢部:積極的に先陣切って色々引っ張っていってくれます。おっとりした感じの僕たちもそれに寄ってくる。プライベートもてきぱきしていて、お姉さん気質ですね。
山本:二人の言ったとおりで、僕より年下ですが、とても頼りになるヴァイオリニストです。


同じヴァイオリニストの東條さんについては?

矢部:同じオケ(N響)にいるので、常に近くにいるのですが、一番意志が強いですね。皆が困っている時、舵を切ってくれます。普段もこのとおり優しい雰囲気なのですが、ここぞという時にビシッと。
山本:そのとおりですね。「じゃあこうしよう」とはっきり言ってくれる決断力があって心強いです。


ヴィオラの山本さんについては。

東條:和声分析など、知識量の豊富さが一番ですね。合わせの前にすごく勉強してきて、それが演奏に生きることも多いです。僕がなんとなくとしか知らないことを言葉で説明してくれるので、なるほどと。
矢部:なんだかうまく行かないな、よくわからないけど......という時に理論的に説明してくれてすっきりする、ということがありますね。


チェロの矢部さんはどうでしょう。

東條:出てくる音の信頼度が誰にも負けない。言葉を重ねて説明するのでなく、音で「こうしたい」と常に出してくれる。最終的にはそれが音楽家としては一番大事ですよね。
山本:それに加えて、彼のセンスはすごく信用できるんです。矢部君が「これいいな」という判断は皆「ああ、確かに」となります。音楽面はもちろんですが、例えばいっしょに買い物に行った時、矢部君が「これいいな」と言ったらすごくいい気がする。説得力があります。
東條:生まれ持ったセンスの良さがきっとあるんだと思う。


今回のプログラムについて伺います。まず後半の2団体での八重奏曲はガーデ(ゲーゼ)作曲のものです。

20200925_(C)OkuboMichiharu_OK84562.JPG大友:このシリーズの中で取り上げるのは2回目です。以前、タレイア・クァルテットと共演しています。八重奏曲で有名なのはメンデルスゾーンで、3回演奏していますが、なんとなく今回はガーデかなと。あまり知られていませんがいい曲ですよね。さわやかで。
矢部:今回初めて曲を聴きました。小難しい曲なのかと勝手に想像していたら、意外とメンデルスゾーンのようなところもあり、軽快な曲でほっとしました。
山本:僕も知らなかったのですが、初めての曲をごいっしょに創っていけるのは楽しみです。エクさんの豊富な経験を分かち合っていただいて演奏できたらいいなと思っています。
矢部:先入観がない曲というのもいいですね。


前半のそれぞれの弦楽四重奏曲は、いつも若手団体に先に曲目を決めてもらい、その後エクが自分たちの曲を選んでいますね。まず、レグルスはリゲティの弦楽四重奏曲 第1番 「夜の変容」を選びました。

山本:後半のガーデの八重奏曲がロマン派のような印象を受けたので、それに対して近現代が入っていた方が演奏会としてバランスがいいかなと思いました。リゲティは僕たちが割と得意としていることもあります。
矢部:やめてよ、勝手にハードルあげるの(笑)。
東條:2022年のミュンヘン国際コンクールの時に演奏した曲です。
西野:動画配信で聴きました!
東條:当時はとてもナーバスになって、やはり今思い返すとやり切れたと言えないところもあり、この機会にもう一度見つめなおす機会にしたいと個人的には思っています。
山本:3年前のコンクール前は短期間でたくさん勉強しましたが、少し寝かせて、こうして再び弾ける機会をいただけたのがうれしくて、それもすごく楽しみです。


若手のクァルテットの方から、プログラム全体の流れを考えて曲目を出してくださったのはめずらしいですね。エクはそれを受けてハイドン作曲「皇帝」を選びました。

大友:そうですね。リゲティが来たので、こちらもバランスを考えました。久しぶりに古典派の名曲「皇帝」を弾いてみようかと。これまで若手がボリュームのある曲をもってくることが多かったですが、今回はコンサートとしておもしろいプログラムになりました。

聴きごたえのあるプログラム、とても楽しみです。ありがとうございました。