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トリトン・アーツ・ネットワーク

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アーティスト・インタビュー

ザ・シックスセンス(木管五重奏+ピアノ)

ごほうびクラシック 第14回

 木管五重奏+ピアノのアンサンブル「ザ・シックスセンス」が『ごほうびクラシック』に登場! ソリストとして世界を舞台に活躍するフルートの上野星矢やピアニストの岡田奏をはじめ、国内プロ・オーケストラの首席奏者が勢揃いしたスーパー・アンサンブルが、即興性に満ちたエキサイティングな六重奏をお届けします。メンバー全員揃ってインタビューにお応えいただきました。
[文:原典子(音楽ジャーナリスト)]

結成のきっかけは、東京藝術大学の同級生で組んだアンサンブルだそうですね。

20250907_UenoSeiya.jpg上野:2008年、僕が藝大1年生のときの吹奏楽の授業で、金子さん、西川さん、長さんと出会いました。彼らは際立って上手かったので、「一緒に木管五重奏をやりませんか?」と声をかけたんです。その後、ふたつ上の先輩だった濱地さん、フランスでの留学仲間だった岡田さんが加わりました。そして長さんがフランス留学から帰ってきたタイミングの2021年にサントリーホールで旗揚げ公演をしました。

西川:まだ1年生で室内楽のなんたるかもわからないような時期にぱっとはじめて、とても新鮮でしたね。今では互いに信頼して音を出すことができて、自分の音についても相談できる仲間たちです。


「The Sixth Sense(=第六感)」というアンサンブル名は上野さんが名づけ親ですか?

20250907_NishikawaTomoya.jpg上野:はい。気心の知れた仲間だからこそ、阿吽の呼吸で感じ合うことができるのではないかと。アンサンブルには即興的な要素があるので、とっさの出来事も多いじゃないですか。そういうとき、事前に打ち合わせしていなくても自然と合ったり、みんなが同じ方向に向かって行けたり、そういうことができるアンサンブルだと思います。


木管五重奏+ピアノという編成ならではの魅力はどのようなところにあると思いますか?

上野:オーケストラのようなアンサンブルの仕方でありながら、奏者ひとりひとりに対する比重が大きいので、よりソリスティックで、個々の技や音楽性を合わせていく面白さがありますよね。全員揃えばシンフォニックな音も出せますし。

20250907_OkadaKana(C)MakotoKamiya.jpg岡田:ピアニストとしては、5人の素晴らしい奏者の間をつないでいく役割や、それぞれの良さを引き出すような役割を意識しながら演奏しています。鍵盤楽器と管楽器はまったく違う楽器ですから、歌やフレーズを感じて、彼らと同じように呼吸しないと本質的に一緒に走っていくことができません。即興性のあるやり取りに臨機応変に対応しつつ、合わせるだけでなく自分からの主張もするといったバランス感覚が重要であり、面白い部分だと思います。


プーランクの六重奏曲は、この編成のために書かれた作品ですね。

上野:まさに六重奏曲の魅力を存分に味わっていただける作品です。6人が同時に演奏している時間が多くて、おしゃべりしているような感じというか。

西川:各楽器のフレーズが短く書いてあって、ひとつのメロディのなかで楽器が次々と移り変わっていく。それによって生まれるカラフルさ、おもちゃ箱をひっくり返したみたいな賑やかさがありますね。

20250907_ChouTetsuya.JPG長:そうかと思うと、たまに出てくる悲しげなメロディから奥行きや陰影が感じられるところがプーランクらしくもあり。この編成における重要な作品を、昔から一緒に演奏してきたメンバーたちと継続的に取り組んでいけるのはとてもうれしいです。


ビゼー(ワルター編)の「カルメン」組曲(木管五重奏版)では、金子さんがコールアングレを吹くのも聴きどころだとか。

20250907_KanekoAmi.jpg金子:はい。オーケストラで「カルメン」全曲を演奏する機会も多いですが、ザ・シックスセンスならではのアクティブな演奏が私は大好きです。

上野:編曲者のダヴィッド・ワルターという人は、モラゲス木管五重奏団というフランスの有名なアンサンブルのオーボエ奏者。木管五重奏を知り尽くした編曲であり、技術的にも本当に難しいです。


ガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」もエキサイティングな演奏になりそうで楽しみです。

濱地:昨今はジャズ的な要素の強い演奏もありますが、やはり我々はオーケストラ奏者なので、クラシック音楽というフィールドのなかでガーシュウィンを表現したいなと。なんといっても岡田さんの素晴らしいピアノとの一体感をお楽しみいただければと思います。

岡田:オーケストラと一緒に弾くときよりも身軽で、自分がアクセルをかけたときに反応してくださるスピードがかなり速いので、会話にリズムがあって、とにかく楽しいです。すごいエンジンを搭載したスポーツカーのような。それでいて、なにをしても大丈夫という信頼感もあって、自在に演奏できるのがありがたいですね。


ところで、皆さんは若い音楽家への発信も積極的に行なっていらっしゃいますが、昨年8月に開催された「The Sixth sense Grand Prix(ザ・シックス・センス・グランプリ)」という新しいコンクールについてお聞かせください。

上野:僕たちは日頃からコンサートのときに、あわせて若い音楽家に向けたクリニックも開催したりしているのですが、コンクールに関しては濱地さんと僕が最初にやりたいと言ってはじめました。ホルン部門、木管五重奏部門、室内楽部門という部門があり、ジュニアやアマチュアからプロレベルまで、あらゆる人が参加できるコンクールです。コンクールという目的があると毎日の練習にも熱が入りますし、必ずその過程で上達があり、参加者同士の人間関係のドラマも生まれると思うんですよね。

20250907_HamajiKaname.jpg濱地:僕らがやっている六重奏というアンサンブルが、弦楽四重奏のようにスタンダードな室内楽のスタイルになったらうれしいなという思いがあってはじめました。慣れないコンクール運営はとても大変で、毎年開催するのは難しいかもしれませんが、これからも続けていきたいという気持ちです。


最後に、皆さんそれぞれの自分への「ごほうび」を教えてください。

岡田:お気に入りのスイーツを買いに行くこと。自然と触れ合いに出かけること。もう少し時間があったら温泉宿に行くこと。計画を立てないで、思い立ったらふらっと旅行に行くのが好きです。

上野:僕はだいたい焼肉に行きます。頻繁にごほうびしてます。

西川:温泉に入って、お寿司頼んで、ビール飲んでっていうフルコースがいいですね。

金子:部屋に温泉がついている宿に泊まって、入りまくるのが好きです。あとは爆買い。これをがんばったというごほうびを、目に見える形で残したいので。

長:最近、エスプレッソマシンを買ってすごくハマってます。ごほうびというより、練習する前から飲んじゃってますね。

濱地:ゴルフはやりすぎてもはや趣味というか仕事みたいになってしまいました。痛風になってお酒も飲めないので(笑)、いいごほうびを探し中です。


――楽しいお話をありがとうございました!20250907_TheSixthSense(C)masahiroono.jpg