バンドネオンの三浦一馬さんが、2017年に立ち上げた室内オーケストラ、東京グランド・ソロイスツ(TGS)は、おかげさまで毎年満席の盛況で回を重ね、今年8月には第3回を迎えます。三浦さんにお話を伺いました。
3年目となる今年は、サックスの上野耕平さんをゲストにお迎えしますね。
親交のあるすばらしいアーティストをゲストに迎えて作っていくというのも、TGSの裏テーマになっています。前回はチェロの宮田大さんを、今回は上野耕平さんをお迎えします。実は、バンドネオンとサックスは、ちょうど1840年代の同じ時期に誕生した楽器なのです。
耕平さんとは、2016年に、音楽祭でご一緒したのが最初です。ガラ・コンサートで、それぞれがソロを演奏したのですが、せっかくだから全員で演奏したいと思い、僕が、ヴァイオリン、サックス、ピアノ、バンドネオンのための曲を編曲しました。耕平さんといえばもちろんスーパースターと知ってはいましたが、実際に共演してみて、その圧倒的な存在感、どこまでもしなやかに歌いこむ音色の美しさ、ステージの空間の魅せ方、お客様とのコミュニケーション......すべてを兼ね備えていらっしゃることに素直に感心してしまって、それ以来、何度かごいっしょしています。今回、発表している《孤独の歳月》《レオノーラの愛のテーマ》《鮫》は、いずれも耕平さんがソロでTGSと演奏する曲です。
過去の2回は、オール・ピアソラ・プログラムでした。今回は?
ピアソラを2回やってみましたが、やればやるほど深いのですよね。ネタ切れになるかと思ったら、もっともっと追及すべきところがあるし、そもそもいい曲がたくさんあります。濃厚で有名だけどこの編成では絶対聴いたことがないであろう曲を極めてみようかなと思っていて。実は、ピアソラ自身が、サックスの入った曲もたくさん書いているのです。そのオリジナル曲を演奏しますので、耕平さんがゲストの今回、ちょうどここを追及すべきなのだろうと思います。弦の厚みがあって、他のパートもポリフォニックに複雑に絡み合うTGSと、すばらしいサクソフォン奏者の耕平さんだからこそできるプログラムを考えています。
立ち上げ時のワクワク感を今でも思い出すのですが、実際に2回演奏会をやってみて、いかがでしたか。
事前に色々と構想して想いを馳せていたものの、はるかに上をいくサウンドでしたね。もちろん、このメンバー、この編成でしか出せないものを、とイメージしてTGSを作ったわけですが、自分の想像すら上回ってきた。それは、すばらしい皆さんが120%で向かって下さるからこそで、TGSを誇りに思う気持ちでいっぱいです。
始める時に、キンテート(五重奏)の延長線上であり強化版であり、オーケストラよりフットワークが軽いものを、と思いえがいていたのですが、そのとおりのアプローチで、もう「あ、これこれ」というサウンド。僕自身も回を重ねて、TGSの聴かせ方が分かってきて、音の組み立て方など、編曲のアイディアが膨らんでいます。全員でバーンと演奏する部分が100だとしたら、その中で、どの楽器をチョイスして作っていくか、絵の具で言えばパレットでどう混ぜていくか、無限なわけです。もっともっと色鮮やかに、鮮明に、グラデーションをつけて変幻自在に見せていくか。皆さんとの信頼関係があるTGSだからこそできる表現を追求していきたいですね。