トリトン・アーツ・ネットワーク

第一生命ホールを拠点として、音楽活動を通じて地域社会に貢献するNPO法人です。
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アーティスト・インタビュー

小山実稚恵&川本嘉子

小山実稚恵の室内楽
ブラームス、熱く深い想いをつなげて 第2回
ヴィオラ&ピアノ・デュオI ~川本嘉子とともに

第一生命ホールでの5年間にわたるシリーズ「小山実稚恵の室内楽」のなかで、小山は、ヴィオラの川本嘉子と組んで、3回のデュオ・リサイタルを企画している。その第1回が12月22日にひらかれる。
[聞き手・文/山田治生(音楽評論家)]

小山実稚恵&川本嘉子、待望のデュオ・リサイタル

小山さんと川本さんが本格的なデュオ・リサイタルをするのは今回が初めてと聞きました。

小山:ブラームスのピアノ五重奏曲などで共演したことがあり、川本さんとデュオをしたいと温めていました。川本さんは、主張がはっきりとしているのに協調性があって、本番のときの集中の高さ、踏み込みの強さが素晴らしいと思います。知性的なのに情緒的。本番での生きた感じが素晴らしいヴィオラ奏者です。そんな彼女との共演が、今回、第一生命ホールで実現できてうれしいです。

川本:小山さんとは、非公式の場で、小品を共演したことがあります。ブラームスの「F.A.E.ソナタ」のスケルツォを演奏したときは、目から火が出るくらい興奮しました。小山さんは一体化して一緒に竜巻のように弾いてくださる。小山さんと一緒に演奏すると、空気を共有して振動させるのがこんなにうれしいのかと感じます。

小山:ブラームスの短い作品でしたが、相手がこう思っている、こうしたいんだということを感じることができました。いい形で音楽に集中しながら一緒に作れる。川本さんとはそういう瞬間があるので楽しみです。

今回の演奏会への思いをお聞かせください。

小山:私はヴィオラとのデュオ・コンサートは初めてです。なので、レパートリーは全て新しいもの。でも、ヴィオラにはヴァイオリンには出せない心地の良い響きがあり、ヴィオラとデュオをやりたいという思いが募っていました。自分の演奏会だと自分だけですが、相手と一緒では、1+1が2というわけではないと思います。川本さんの音楽には、心揺さぶられて、流れにひっぱられていく感じの面白さや魅力があります。だから彼女と演奏したいと思っていたのです。

川本:ヴィオラはどちらかというとマイナーな楽器なので、小山さんのようなメジャーなピアニストと、ヴィオラを広めることができるのは、ヴィオリストとして、とてもうれしく、誇りに思います。小山さんはお目にかかるたび、進化しています。集中力のスポットに入る感じや、演奏で助けてくれる種類の多さが凄いのです。

今回のプログラムはどのように決めましたか?

(C)入り_トリミング川本嘉子_(C)大窪道治.JPG川本:ヴィオラもソリストの楽器に仲間入りできるようなプログラムを考えました。ヴィオラのこういう演奏会はあまりなく、ヴィオラの演奏会を聴いたことのない方も多いと思いますので、私はヴィオラで聴きやすいメロディを弾くことを心がけています。それで、3大Bがいいかなと思いました。

小山:私はブラームスが好きなんですよね。自分に合っていようが合ってなかろうが好きです。バッハはもともと好き。ベートーヴェンは魂が震えます。

川本:バッハのヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ第2番はふくよかでのんびりとした曲。それをヴィオラで弾くとき、ヴィオラ・ダ・ガンバと似た緩やかさが出せればいいと思います。ベートーヴェンのチェロ・ソナタ第3番は、5曲のなかで一番馴染みやすい作品だと思います。今回は最初だから、一番ポピュラーな第3番にしました。ヴィオラへのアレンジは自分でしました。ほとんどそのままですが(笑)。

小山:ベートーヴェンのチェロ・ソナタ第3番は彼が次々に傑作を作り出していいた時期の作品ですね。チェロの音で馴染んでいますが、ヴィオラではどうなのか、新しい興味がわいています。

メインはブラームスのヴィオラ・ソナタ第1番ですね。

川本:内面に訴えかけてくる曲で、どこまで表現できるか、毎回、楽譜を見直しますが、また新しい発見があると思うので楽しみです。

小山:大学1年生のとき、先輩の卒業演奏会で弾いて以来ですが、ところどころ鮮明に覚えています。でも、演奏も解釈もその時とは全く違うと思います。ピアノは音が減衰する楽器です。でもブラームスは、強打すればいいとは真逆で、打鍵をゆっくりしながらも、減衰を越えた域で楽譜を見ないといけないというところがあります。行間をどうするか。川本さんの溢れる音楽を私がどう受け止めて、一つの音楽にしていくかが大きな使命。受け止めて、ともに発露したいなと思います。

川本:私はオーケストラ・プレイヤーなので、刺激は指揮者から受けることが多い。人の引き出しを借りることが、一人ではないという安心感にもなります。今回、小山さんのようなソリストと演奏するときは、どう巻き込まれるのか、ワクワクします。

デュオ・リサイタルは第2回、第3回と続いていきますね。

小山実稚恵★推奨2★(c)ND CHOW.jpg小山:1回で終わるのではなく、時間をかけてじっくり取り組みたいと思っていました。自分たちの本物のレパートリーを作り上げたいと思います。ゆっくりがいいというのが二人の共通の思いです。2年に一回、長くずっとやっていきたい。やって、休んで、やって、休む・・・

川本:同じ曲を何回も弾いて、練って練って、熟成させることができるとうれしい。言葉ではなく、空気になるまで作り込んで、二人だけにしかない、バッハ、ベートーヴェン、ブラームスを実らせていきたいです。3回目のプログラムはまだ決まっていないのですが、今の枠のない状況で、二人でどこまでいけるのかを考えるのが楽しいです。