ベートーヴェンが「第九」の後、最晩年に書いた弦楽四重奏曲5曲は、他の楽器の演奏家がうらやましがるほど中身の濃い作品群。4年かけてこれらを演奏しているエルデーディ弦楽四重奏団が、今年取り組むのは第13番です。
この第13番の終楽章である第6楽章として、当初ベートーヴェンは巨大なフーガ(大フーガ)を書きましたが、当時の聴衆にはあまりに難解で、初演後、助言を聞き入れて第6楽章を書き直しています。長いあいだ、書き直された第6楽章が演奏されるのが常でしたが、近年は、大フーガを第6楽章として演奏することも。
「師事したアマデウス弦楽四重奏団も、第6楽章を大フーガにすると、直前の第5楽章カヴァティーナの素晴らしさの印象が消し飛んでしまう、と言っていましたね。それで、これまでは書き直されたほうで演奏していたのですが、今回は最初のベートーヴェンの意思を尊重しようと」(以下カッコ内、蒲生談)
組み合わせたのは、ブラームスの弦楽四重奏曲。
「ベートーヴェンの後の時代に生きたブラームスは、交響曲も弦楽四重奏曲も推敲を重ねて長い時間かけてやっと完成させています。ブラームスが自分の形になるまで待って、その作風を凝縮させて書いた弦楽四重奏曲と、立ちはだかる壁だったベートーヴェンを、まとめて聴くことは、とても興味深いと思います」