「八月のまつり」は、おそらく史上あまり例のない演奏会のシリーズです。《原爆小景》の演奏を柱として、しかし、反戦を声高らかに訴えるというのでもなく、原爆や戦争の犠牲者への思いを深めながら、他方では合唱の楽しさをも伝える演奏会として、ささやかながらしたたかに、36年間続けられてきました。もちろん林光さんの持っていた強い思想と、それに共鳴する東京混声合唱団の志があってのことでした。林光さんが亡くなって3年が過ぎ、作品は残り、その中にぎっちりと詰まった彼の思想を東混が受け継いでゆこうとしていることは、本当に頼もしいことです。
今年は被曝、敗戦から70年という節目の年なので、今回書かせていただく新曲に木島始さんの《予兆》という詩を選びました。併せて、2012年に作曲した良寛の和歌による《花筺》を演奏しますが、この70年間に日本人がたどってきた道と現在への警鐘を、ふたつの対照的な言葉と音楽で照らし出そうと思います。
今年没後50年を迎える山田耕筰の歌の林光さんによる名編曲も併せてお聴きいただきます。ご期待ください。
[指揮・ピアノ 寺嶋陸也]