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トリトン・アーツ・ネットワーク

第一生命ホールを拠点として、音楽活動を通じて地域社会に貢献するNPO法人です。
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アーティスト・インタビュー

©三好英輔

田村響

昼の音楽さんぽ 第14回
田村響 ピアノ・リサイタル

7月の「昼の音楽さんぽ」は、気鋭の若きピアニスト田村響さんの演奏をお楽しみいただきます。ロン・ティボー国際コンクールの優勝から6年。26歳の「成長と挑戦」をテーマに、充実のプログラムをお届けします。

いつも自分の枠を超え、聴衆のみなさんに投げかけ、
プレゼンテーションしていけるように、挑戦し続けたい

音楽に、いつでも新鮮さと歓びをもって

田村さんは小さな頃から国内コンクールで優勝されてきました。どんな少年時代を過ごされましたか?

小学校の夏休みの思い出といえばコンクールでしたね。楽しかったですよ。同世代の部で優勝しても、飛び級して失敗、またリベンジして優勝と、いいモチベーションになっていました。夏休みの宿題をどうやって片付けるかが問題でしたけど(笑)。家ではポップスの歌番組を楽しんでいました。スピッツ、B'z、ミスチルが大好きで、中学の頃はスカ・バンドにはまりました。他ジャンルの音楽をよく聴いていたので、クラシックに対する新鮮さを保ってこられたのかもしれません。

高校卒業後は、ザルツブルク・モーツァルテウム大学へ留学されましたね。

音楽理論を知識として詰め込むような、日本の勉強の仕方に疑問を感じていたんです。知識は必然性を強く感じられた時こそ、自分の中に根付くもの。そんな信念を持っていたので、10代のうちはまだ、本能的な感性の部分を磨きたくてヨーロッパに渡りました。指揮科の学生と深夜までいっしょにピアノ協奏曲を勉強したり、スポーツ医学のような他分野の学生とも交流することで、結果的に知識も人間としての幅も大きく広げられる出会いがありました。

昨年秋から、また日本に拠点を戻されたそうですね。生活スタイルに違いは生まれましたか?

ザルツブルクの家は、夜8時までしかピアノを弾いてはいけないことになっていたので、それが逆に良かったです。日本の自宅は、夜遅くまで練習できる環境なので、弾かないでいると罪悪感があるんですよね。でも8時までと決まっていれば、それまで集中して練習し、その後はしっかり食事を作って食べたり、リラックスしたり、という時間にあてられます。リフレッシュすることも大切なので、日本でもそのスタイルは維持するようにしています。いつでも歓びをもって音楽の世界に入っていけるように。

テーマは「成長と挑戦」

2007年にロン・ティボー国際コンクールで優勝されたのは20歳の頃でしたね。あれから6年、ご自身の中で大きく変わったことは?

優勝した後の1、2年は苦しかったですね。本番の数や規模が急に大きくなって。もちろん感謝の思いはありましたが、そうした生活に慣れておらず、気持ちの面で守りに入ってしまったように思います。それが2010年くらいから、少しずつ自分を解放できるようになりました。いろんな職業、音楽以外の世界で輝いている方たちの考え方にふれ、自分もエネルギーや「気合」を込めて進んでいけるようになりました。

今回の「昼の音楽さんぽ」のテーマは、「成長と挑戦」とのことですが、プログラムについてお聞かせください。

軽やかな作品と深みのある作品との対比やバランスを考えて選曲しました。幕開けはショパンのワルツで華やかに。そして有名なスケルツォ第2番を聴いていただきます。後半のシューマンの「幻想曲」は大曲です。渋く、宗教的な響きもあります。実は今回はじめて取り組む曲なんです。ずっとまわりから勧められていたのですが、やっと自分の中で機が熟し、演奏することにしました。いつも自分の枠を超え、聴衆のみなさんに投げかけ、プレゼンテーションしていけるように、挑戦し続けたいと思います。

[聞き手/文 飯田有抄]