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トリトン・アーツ・ネットワーク

第一生命ホールを拠点として、音楽活動を通じて地域社会に貢献するNPO法人です。
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アーティスト・インタビュー

蒲生克郷/花崎淳生

クァルテット・ウィークエンド2013-2014
エルデーディ弦楽四重奏団
~生誕200年を迎えたヴェルディと近代イタリアの名作たち

生誕200周年のヴェルディによる弦楽四重奏曲を中心に、イタリアの作品でまとめたプログラムをおくるエルデーディ弦楽四重奏団。ヴァイオリンの蒲生克郷さんと花崎淳生さんに伺いました。

「歌」の国イタリアの、歌の要素も入った弦楽四重奏たち

蒲生:以前に「紀行」のシリーズを行っていましたが、その1回目が「イタリア紀行」で、ヴェルディの弦楽四重奏曲を演奏しました。ヴェルディはそれ以来、他の2曲には初めて取り組みます。

オペラ作曲家ヴェルディのヴェルディ節が楽しめる名曲

蒲生:非常によくできた曲です。終楽章などは非常に凝ったつくりで、音がとりにくく難しい。斬新なことに挑戦して作曲している。かと思えば、オペラとまったく同じようなヴェルディ節が楽しめるところもあります。イタリア・オペラが好きな方が聴けば、「ああヴェルディだね」と、すぐにわかる音楽ですね。
花崎:この弦楽四重奏曲は、有名なオペラ「アイーダ」のナポリ初演が、ソプラノ歌手の病気のために延びて時間ができた時に、ヴェルディが書いたのですよね。
蒲生:要請された訳ではなく、自分が書きたいものを書いたのでしょう。偶然生まれて良かったと思います。

クラシック音楽の作曲家ニーノ・ロータ

花崎:ロータは、映画音楽で知られていますから、弦楽四重奏曲も書いているのは意外かもしれませんね。
蒲生:最近、高く再評価されています。言われたイメージを、すぐに即興で弾くことが上手く、フェデリコ・フェリーニのように、ロータにしか音楽を依頼しなかったという映画監督もいるくらい。ただ本人はクラシックの作曲家という自負が強かったようですね。この弦楽四重奏曲は、クァルテッティーノのような小さな曲ですが、センスがよくて分かりやすくて、ちょっとしゃれている。
花崎:さわやかで、重くなくて、イタリアの20世紀の雰囲気もあり、演奏会の最初にふさわしい曲です。

隠れた名曲、ピツェッティによる大曲

蒲生:ピツェッティはとにかく一度聴いていただく価値のある隠れた名曲です。規模が大きくて内容が充実している。あまり知られていませんが、イタリアの保守派の重鎮です。1920年ぐらいにイギリスの音楽雑誌が、当時のイタリアで一番の作曲家としてピッツェティを挙げたくらい。まだプッチーニが存命だった頃に、プッチーニを差し置いてです。日本の皇紀2600年にはイタリア代表として曲を委嘱されている。戦前の方が有名だったのでしょう。彼の作品では、中世ルネッサンスやグレゴリア聖歌など昔の音楽に素材を求めたものが出てきますが、この弦楽四重奏曲でも、各楽章の最後にいにしえの音が救済のモチーフのように出てきます。どんな苦しいことも、最後は救済によって救われるというキリスト教的な教えが彼の作品の根底にあるようです。調性にこだわったその作風にもよるのでしょうが、新しいものがもてはやされた戦後急速に忘れられ、彼の作品の数々が音として聴けるようになったのは、珍しい曲を沢山CD化するようになった比較的最近の事。この曲も、パート譜しかなくて、スコアは一度出版されているのですが今は絶版のようで、色々とイタリアで探してもらって、何とか手に入れました。

花崎:イタリアは、圧倒的に『歌』の国ですから、今回演奏する3曲にも当然そんな歌の要素が入っています。弦楽四重奏曲というとすぐに思い浮かぶドイツの古典派や、他の国の20世紀の作品とは、だいぶ雰囲気が違うかも知れませんが、こういう世界も紹介したいですね。

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演奏に値する曲かどうか、必ず譜面を手に入れ、4人で音を出してから判断するというエルデーディ弦楽四重奏団。蒲生さんのお宅には、お蔵入りになってしまった楽譜がたくさんあるのだそうです。今回のプログラムも様々な候補曲を実際に弾いて、珍しいけれど、ぜひお客さまにご紹介したいと選ばれた名品ばかり。歌心あふれるイタリアの弦楽四重奏曲たちをお楽しみください。