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トリトン・アーツ・ネットワーク

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アーティスト・インタビュー

オライオン弦楽四重奏団×関本昌平

クァルテット・ウィークエンド2012-2013
オライオン弦楽四重奏団×関本昌平

待望の初来日! オライオン弦楽四重奏団
期待の若手ピアニスト関本昌平

NY室内楽シーンの大御所オライオン弦楽四重奏団(以下Q)は、地元音楽ファンなら知らぬ者はいないベテラン中のベテランをそろえた職人集団。なんと初来日というヴァイオリンのダニエル・フィリップス氏からご紹介願おう。

「私たちは学生が集まって組んだクァルテットではありません。結成したときに全員がもうキャリアを積んでいました。弟のトッドはオルフェウス室内管を結成、私は独奏活動を始めていた。ティモシー・エディは室内楽奏者として確固たる地位があり、教職も得ていた。スティーヴン・テネンボムはあらゆるところであらゆる人と共演していた。2人はガリミアQのメンバーでしたし」

ピッツバーグ交響楽団のヴァイオリン奏者の息子に生まれたフィリップス兄弟は、10代初めから父の弦楽四重奏に参加、室内楽に親しんだ。

「私たちは若くして弦楽四重奏演奏に触れ、これが、自分らが目指す最高の音楽だと知ったのです。ソリストは派手ですし、有名になれます(笑)。でも弦楽四重奏は弦楽器のためのもっとも偉大な楽譜で、音楽的にもより多くのチャレンジを与えてくれます」

10代でまだ無名のヨー・ヨー・マとピアノトリオを組んでいたダニエル・フィリップスは、ヨーロッパの巨匠、シャンドール・ヴェーグと出会い、愛弟子のひとりとなる。

「私たちはヨーロッパで訓練され、ヨーロッパの価値観を近しく感じています。ヴェーグ先生の言葉を借りれば、私たちはどこか大西洋の真ん中あたりにいるって(笑)」

*****

巨匠なのに来日のチャンスがなかったオライオンQを日本に招いたのは、期待の若手ピアニスト、関本昌平だ。

「ダニエルさんは、僕の妻が伴奏の仕事をしているNYの音楽学校の先生です。リンカーンセンター室内楽協会で初めて彼らの演奏を聴き、"えっ!? 弦楽四重奏ってこんなのなの"って思いました。ふだんダニエルさんはサンタクロースみたいで(笑)、人柄が温かくて、全然怒らない。それがまるで別人でした。オライオンQの凄いところは、4人が本当に個性的で、自由でいながら互いが何をするかすべてわかり、音楽を構築して展開していく。アンサンブルってこれだって感じ。自分のイメージしていたもののはるかに上に行っていましたね」

至芸に圧倒された大先輩との初共演に、若いピアニストも力が入る。

「室内楽って、ここをこうやっておこうってマニュアル的で無難な演奏になることも多いんですよ。でもホントに良い室内楽は、もっと可能性が広い。心を揺さぶられた方々といっしょに弾けるのだから、オライオンQとの共演は絶対に刺激が強いと思います」

[取材/文 渡辺和(音楽ジャーナリスト)]