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トリトン・アーツ・ネットワーク

第一生命ホールを拠点として、音楽活動を通じて地域社会に貢献するNPO法人です。
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レポート

基本情報

日時 2023年1月31日(火)11:30~12:15/13:35~14:20
出演 田村 緑(ピアノ)
概要 対象者:4年生
人数:44名

助成等:文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業) 
    独立行政法人日本芸術文化振興会

レポート

【プログラム】

♪サン=サーンス:組曲「動物の謝肉祭」より
     「序曲とライオンの行進」/「めんどりとおんどり」
     「野生のロバ」/「白鳥」
♪♪ピアノの ひ・み・つ ♪♪
♪ハンドベルで奏でるパッヘルベルのカノン♪  編曲/田村緑
♪みんなで歌いましょう「翼をください」
♪エルガー体操  使用曲/エルガー:威風堂々第1番  振付・構成:田村緑 
♪「音楽と絵本」のプレゼント   
  使用曲/ドビュッシー:「ベルガマスク組曲」よりプレリュード  構成:田村緑
♪サン=サーンス:組曲「動物の謝肉祭」より「終曲」


【レポート】

 田村さんが登場すると、あっという間に子どもたちの心をグッと掴み、音楽に引き寄せている感じがしました。田村さんの会話のテンポの速さが子どもたちの集中力を高め、期待感を持たせることにつながったのだと思います。★P1310015.JPG  曲名や写真がプロジェクターに映し出されるので、理解しやすく、音楽に向き合う姿勢が作られました。“曲名あてクイズ”や“ピアノのひみつクイズ”の時は、皆がしっかりと演奏を聴いたり、考えたりしていました。
 視覚情報が理解の助けになり、音楽に関する情報を認識しやすくなったため、子どもたちが音楽との関係を深く築けるような環境となりました。曲に登場する動物を当てるクイズでは、「サン=サーンスが意図したものであっても、個々の感じ方は自由」という大切な点を田村さんは伝えていました。クイズは子どもの思考力や興味・関心を引き出し、結果的に知識の定着が図られるのだと思います。
 その場にいる子ども達全員と共演するために、田村さんが考案した「ハンドベルと奏でるパッヘルベルのカノン」では、全員が意欲的に取り組みました。中には演奏に浸って、指揮者のように体を動かしている子どももいました。その場で即興的に行う活動でしたが、サポーターや先生が各グループのリーダーを務め、子どもたちも失敗を恐れずに鳴らすことができて満足そうでした。音をリレーしたり二人で合わせたり、他者と息を合わせることで心の対話が生まれ、田村さんの演奏とのコラボによって響きに包まれる中、個々に有能感を得ることができたと思います。
★PXL_20230131_050701838.jpg 「翼をください」の合唱時には、皆生き生きと元気な声で歌っている姿が見られました。カノンコードで成り立つ二つの曲の関係性を感じながら、田村さんの演奏に自分たちの表現を重ね合わせることで、より一層誇らしいような気分になって歌うことができたのだと思います。
 田村さん考案「エルガー体操」は、音楽に合わせて体を動かすことで音楽と一体になり、楽しさや気持ちよさを感じているようでした。体を動かして聴くことで音楽の要素も認知しやすくなり、音楽の受容度も高まります。「また、この曲を聴きながら動きたい」という欲求が生まれれば、興味・関心に留まらず、このことがきっかけで、YouTubeを聴いたり、演奏会に足を運んだりして、様々な学びの力に発展していくかもしれません。
 田村さんは長年アウトリーチに取り組み、ノウハウとスキルを積み重ねておられるので、「主体的・対話的で深い学び」や学習の基盤とも言える「学ぶ意欲」にアプローチした、学校教育に貢献できるアウトリーチが展開されました。「聴く」ことに主眼を置きながら、「考える」「想像する」「参加する」「協働する」「体感する」など「聴く」ことに留まらない音楽活動であり、「学ぶ意欲」を引き出す活動でした。またアウトリーチの醍醐味は、やはり生演奏の迫力ですが、それ以上に演奏家の人間的な魅力も重要なポイントです。普段あまり生演奏に触れることのない子どもたちが、演奏家の魅力(演奏を含めた)に触れて、心を動かされることで、子どもたちの「何か」を掘り起こすきっかけになり、それが様々な活動への意欲につながるかもしれません。

(トリトンアーツサポーター鈴木香代子 観察レポートより)


【子どもたちのアンケートより】(抜粋)

●わたしは「白鳥」という曲がとてもすてきだなと思いました。そしてクラシックにきょうみを持ちました。心がおどるような曲がたくさんあってとてもおもしろかったです。家族みんなでコンサートへ行こうと思いました。
●ピアノのひき方によって、いろいろな想像ができるのですごいと思いました。
●ピアノの下をくぐった時に、響板がふるえているのがとても分かりました。
●「カノン」という曲は知っていたけれど、音がリレーをしたり、ハモったりして、きれいな曲ができていることにおどろきました。みんなと合わせた時、みんなだけのいい音楽ができたと思います。
●みんなでハンドベルを演奏したのがとても楽しかったです。私はピアノを習っていたけどむずかしくてすぐやめてしまいました。でも今日の音楽をきいて、またチャレンジしてみたいと思いました。プロの演奏ってとてもすごいんだなと思いました。音は目に見えないものを表していることがわかりました。
●今日、クラシックを聞いて、昔の曲や体そうをして音楽にとてもきょうみを持ったから、ほかの音楽も聞きたいと思いました。
●ぼくは音楽がきらいでした。でも物をつくることには興味がありました。このコンサートをきいてピアノをいつかつくってみたな。音楽もおもしろいんだな。どうやって響板はつくられたんだろうと思い、音楽にすこし興味を持ちました。有難うございました。楽しい時間でした。
●音楽が気持ちをもりあげてくれて、改めて音楽はステキだなあと思いました。
●音楽は、作曲者の気持ちなどが伝わるから、音楽は自由だと思います。
●田村さんのピアノは音色がとてもきれいで、もっと聞きたくなりました。また、田村さんに会えたらとてもうれしいです。。
●5年生になった時もききたいと、強く思いました。

プロフィール

田村緑(たむら みどり)ピアノ  
その躍動感に満ち、情感溢れる演奏スタイルと、在英経験を活かした独創的プログラムが注目され、全国各地で演奏活動を展開中。特に普及の分野では先駆者的存在。聴き手が音楽を楽しめる体験とするために様々な手法を生み出すピアニストとして貴重な存在である。地域と共にある新しい企画開発、地域に貢献できる演奏家育成など、活動は多岐に渡る。桐朋女子高校音楽科卒業、英国ギルドホール音楽院ピアノ科首席卒業、シティ大学大学院修士課程修了。特別研究員として母校の音楽院に勤務。IC・ベートーヴェン・ピアノコンクール第1位受賞。ロンドンの名門・ウィグモアホールでのピアノリサイタル、BBCテレビ・ラジオ出演、ヨーロッパ内外で演奏。2016-2018いわきアリオス・アソシエイト・アーティスト。(一財)地域創造・協力アーティスト。
コロナ禍においても活発に活動を継続。2020年7月~9月、オリジナル企画の提供と監修で話題となった三重県文化会館「マイベストシート・コンサートシリーズ」の特集番組は、2020年9月NHK「まるっと三重」、10月NHK「おはよう日本」にて全国放送される。CD「魅惑のピアノ名曲集」「展覧会の絵」他。
https://www.tmzm.net
©︎Shigeto Imura