トリトン・アーツ・ネットワーク

第一生命ホールを拠点として、音楽活動を通じて地域社会に貢献するNPO法人です。
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レポート

基本情報

日時 2019年2月28日(木)13:30~14:10
出演 川本嘉子(ヴィオラ)  吉野直子(ハープ)
概要 実施会場:聖路加国際病院本館2階 トイスラー記念ホール
対象者:通院・入院の患者様とそのご家族
人数:80名
助成等:文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)
    独立行政法人日本芸術文化振興会

プロフィール

川本嘉子 ヴィオラ  Kawamoto Yoshiko
92年ジュネーヴ国際コンクール・ヴィオラ部門最高位。96年村松賞、97年第7回新日鉄音楽賞・フレッシュアーティスト賞受賞。アルティ弦楽四重奏団、AOIレジデンス・クヮルテットのメンバー。91年東京都交響楽団に入団。99年より2002年退団まで首席奏者を務める。タングルウッド、マールボロ、東京の夏、サイトウ・キネン、小澤音楽塾、水戸室内管、アルゲリッチ音楽祭等に参加。アルゲリッチやバシュメットなどと共演し絶賛を博している。チョン・ミョンフンとの室内楽では日本・韓国公演も行なっている。ソリストとして、これまでにベルティーニ、フルネ、などの著名な指揮者と共演。2017年からNHK交響楽団首席客演奏者を務める。
© 大窪道治
吉野直子 ハープ  Yoshino Naoko
日本が誇るハープの国際スター。第9回イスラエル・コンクールに17歳で優勝。
ベルリン・フィル、イスラエル・フィル、フィラデルフィア管などトップ・オーケストラ、小澤、アーノンクール、ブーレーズ、アバドほか世界的指揮者との共演、ザルツブルク、ルツェルン、ロッケンハウス、グシュタード、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン、サイトウ・キネン、マールボロ、モーストリー・モーツァルトはじめ主要音楽祭から招かれている。数々のCDも高く評価されている。
オフィシャル・サイト http://www.naokoyoshino.com/
© Akira Muto

レポート

【プログラム】

【ヴィオラソロ】
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第6番 BWV1012より第2曲 アルマンド / 第7曲 ジーグ (ヴィオラ版)

【ハープソロ】
M. I.グリンカ:夜想曲
W. ポッセ:ワルツ 変ホ長調

【デュオ】
C.ドビュッシー(川本嘉子編):チェロ・ソナタ(ヴィオラ版)

【レポート】

■ヴィオラの独奏による《無伴奏チェロ曲第6番》が始まると、皆さん集中してじっくりと演奏を聴いているのが印象的でした。演奏者との距離が近く、手元も見ることができたので、視覚的にも楽しんでいただけたのではないかと思います。

■少し緊張感のあるクラシックのコンサートならではの雰囲気が、病院内であることを忘れさせ、音楽を味わう様子が感じられました。ご年配の方や子供たちに音楽を楽しんでもらうためのアウトリーチとは異なるクラシックのプログラム構成が、普段コンサートへ行くことが難しい方に「本格的な音楽を提供する」という目的に合い、満足して頂けたのではと思います。

■ハープの独奏による《夜想曲》では背筋を伸ばし前のめりでのぞき込むような様子が見られました。赤ちゃんを抱きかかえて音楽に合わせて体を揺らすお母さんをはじめ、多くの人が体をリラックスさせて聴いていました。《ワルツ 変ホ長調》でも、同様に穏やかな表情で演奏を聴かれている方々が多くいらっしゃいました。

デュオの前に2つの異なる楽器による独奏を入れることで、奏法や音色の違いをより味わうことができ、またハープの演奏の際は特に演奏者である吉野さんの穏やかな表情につられて、緊張が解かれている様子も感じられました。

■お二人のトークでは時折お客さんも笑うなどの反応を見せて、興味深そうに聞いていました。ハープのペダルを踏む足がバタバタしない吉野さんの技術を解説するなどの演奏家ならではのお話が良かったのだと私は思います。

■ドビュッシーの《チェロ・ソナタ》は、柔らかいハープの前奏で始まりヴィオラの第1音目でパンフレットを見ていたお客さんがハッとした表情で顔を上げたのが印象的でした。終演後は手を高く上げ拍手を贈る方や、頷きながら余韻を味わうおじいさん、にこやかな表情で帰られる方が多くいらっしゃいました。

穏やかなトークの際の雰囲気と一線を画す音の緊張感がお客さんにも伝わったような気がした瞬間でした。3楽章にわたるこの曲はうっとりとするような旋律と軽やかなピッチカートの部分が織り交ざっていて、クラシック愛好家の方だけでなく普段クラシックはあまり聴かない方にも楽しんでいただける曲目であったのではないかと感じました。

【まとめ】

時間があったからという理由でふらっと寄ったというよりも、音楽に興味があってこの病院でコンサートをするならぜひ聴きたいという方が多く、せっかくの機会だからと終始じっくりと集中して聴いてくださっている方が多くいました。中高年の方々が多くいらっしゃいましたが、若者も数人、親子も約3組、病院で働いている方々も多くいらっしゃっていたので、意外にも幅比良い年代で需要があるのだなと感じました。病院でのアウトリーチは「癒しのための音楽」というイメージが強かったのですが、純粋に音楽を楽しみ、結果的に「癒し」へとつながることもあるのだなと改めて思いました。

(サポーター 篠原美奈 観察レポートより)