トリトン・アーツ・ネットワーク

第一生命ホールを拠点として、音楽活動を通じて地域社会に貢献するNPO法人です。
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レポート

基本情報

日時 2018年11月30日(金)
9:40~10:25/10:45~11:30/11:40~12:25
出演 弦楽四重奏[松原勝也/松谷萌江(ヴァイオリン) 鶴友見(ヴィオラ) 饗庭萌子(チェロ)]
概要 実施会場:中央区立京橋築地小学校 音楽室
対象者:小学4年生1クラス、6年生2クラス
人数:98名
助成等:文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)
    独立行政法人日本芸術文化振興会

プロフィール

松原勝也 ヴァイオリン  Matsubara Katsuya
東京藝術大学在学中に安宅賞受賞。ティボール・ヴァルガ国際コンクール、クライスラー国際コンクール等で上位入賞。第17回中島健蔵音楽賞、第55回文化庁芸術祭新人賞受賞。89~98年まで新日本フィルハーモニー交響楽団コンサートマスターを務める。01年よりNPO法人トリトン・アーツ・ネットワーク/第一生命ホール主催の若い演奏家のための弦楽セミナーをプロデュース。東京藝術大学音楽学部教授。
松谷萌江 ヴァイオリン  Matsutani Moe
神奈川県横浜市出身。5歳よりヴァイオリンを始め、これまでに磯部夕佳里、松宮麻希子、松原勝也、景山誠治、齋藤真知亜の各氏に師事。室内楽を齋藤真知亜、百武由紀、山口裕之、横山俊朗の各氏に師事。東京音楽大学を卒業し、現在はフリー奏者としてオーケストラや室内楽を中心に活動中。鎌倉ジュニアオーケストラ、ヤマハ大村楽器、横浜オーケストラ倶楽部各講師。
鶴友見 ヴィオラ  Tsuru Tomomi
2010年国立音楽大学演奏学科ヴィオラ専攻卒業、ならびに室内楽コース修了。在学中Gluckカルテットを結成し、第6・7章プロジェクトQに参加。第4回横浜国際音楽コンクール第3位。第33回霧島国際音楽祭賞受賞。PMF・小澤征爾音楽塾・Lucerne Festival Academy・MMCJに参加。サントリーホール室内楽アカデミー第1期生。桐朋学園オーケストラアカデミー研修課程修了。
饗庭萌子 チェロ  Aiba Moeko
4歳より米国にてジェニファー・ヤン氏の元でチェロを始める。神奈川県立弥栄高等学校音楽コースを経て東京藝術大学卒業。霧島国際音楽祭、MMCJ 2017やSMA2018に日本よりメンバーとして選抜される。AllegroVivo音楽祭にてLaszlo Fenyöのクラスを修了。横浜信用金庫で結成されたAquamarin Quartetの専属チェリスト。フィリップ・ミュレール、フランス・ヘルメルソン、堤剛の各氏のマスタークラスを受講。チェロを菊地知也、西谷牧人、中木健二の各氏に師事。

レポート

【プログラム】

プロコフィエフ:弦楽四重奏曲第2番 ヘ長調 Op. 92 第1楽章
チャイコフスキー:弦楽四重奏曲第1番より 第2楽章 アンダンテ・カンタービレ
ヴォルフ:イタリア風セレナード
J.S. バッハ:ゴルトベルク変奏曲 より「アリア」

【レポート】

■4人の演奏家が楽器を持って入場、訳の分からない言葉でお互いに会話を始めます。
聴いている子どもたちは何を会話しているのかわからず、何が起こったのだろうと呆気に取られて見ています。

そのうち、ヴァイオリンの松原さんが何か訳のわからない言葉で話しかけると、今度は饗庭さんがチェロの音でそれに応えたり、音で会話を始めました。

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そして、その音での会話は、少しずつ、≪プロコフィエフ:弦楽四重奏曲第2番第1楽章≫の演奏へとつながっていきました。

実は始めに4人が話していたのは、その場のやり取りの中で生み出していた何語でもない言葉。4人が改めて自己紹介を始めると、子どもたちが「日本語が話せたの!」と驚く場面もありました。

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■次に、音楽を使って実験をしてみます。

実験①:同じフレーズを演奏する前に、「不思議な夢」と言って演奏した時と、「空を見上げて」と言って演奏した時は違って聴こえるのでしょうか?

子どもたちからは、「不思議な夢の方がよかった」とか、「いやいや、自分は空を見上げて、の方が好きだった」といった声があがりました。

実験②:今度は、同じフレーズを演奏する前に、「音楽で太陽を輝かせてみるね」と言って演奏した時と、「音楽で風を吹かせてみるね」と言って演奏した時は違って聴こえるのでしょうか?

こちらは「太陽の時はギラギラしていたのに、風の時は台風がやってきた」など、様々な感想が聞かれました。

饗庭さんから、「こんな実験をしてみたけれど、みんなが音楽を聴くときには、何かを想像してみたり、思い出してみたり、逆に何も思い浮かべなくてもいいし、自由に音楽を聴いて欲しい」というメッセージを伝え、先ほどから断片的に演奏してきた、≪プロコフィエフ:弦楽四重奏曲第2番第1楽章≫を、通して聴いてもらいました。

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■最後に、創作物語の世界へいざないます。

「ある日のこと、家に帰ると、招待状が届いていました。
『夜の学校でお待ちしています。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロより』
そこで学校に行ってみることにしました。・・・」
といった語りで始まった、子どもたち自身が主人公の冒険物語。
音楽とともに、それぞれの心の中に浮かんでくる世界を旅してもらいました。

チャイコフスキー「アンダンテ・カンタービレ」は、有名で美しい旋律の三部形式の曲で、途中AからBへ旋律が変わるところで「扉が見える」そしてBからAへ戻るときに「扉を開いてみよう」「何か見える!」、最後の部分では「島が見える!」という言葉によって想像を膨らませていきます。

本当に美しい演奏で雲の上を歩いているような感じで、Bの部分ではヴァイオリンの綺麗な音色とチェロの低音ピチカートがとても印象的な演奏でした。

「島を4つの弦楽器と一緒に冒険してみよう」という言葉とともに聴いてもらった、ヴォルフ「イタリア風セレナード」は、ロンド形式で次々に色々な事象に出会う様子が良く感じるだけでなく、とても陽気でダンスのような感じの曲想を演奏からも受けます。

「雲に乗って家に帰ろう」という言葉とともに聴いてもらったのは、バッハ「アリア」(ゴルトベルク変奏曲 より)です。

天井から降りてくるような厳かな感じがしますが、高音の主旋律のヴァイオリンと味わいのある中音のヴィオラそして低音響くチェロのゆったりとしたハーモニーの演奏は本当に心に響きました。

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言葉と一緒に音楽で語られる「起・承・転・結」が分かり易くとても良く出来た音楽物語でした。
子どもたちは、音楽を聴きながら自由に色々な想像を膨らませ、同時にこの後どうなっていくのか興味と想像を掻き立てられたのではないかと思います。


【全体を通して】

・「自由に想像し音楽を聴いて感じていい」ということを演奏家が子どもに伝えて行く仕組みと過程がとても良かったですし、子どもたちが堅苦しくなく心から初めて聴く曲でも想像を膨らませ楽しむことが出来たと思います。

・弦楽四重奏の「静」と「動」のあるダイナミックで、夫々の弦楽器の音域と音色が生かされた息の合った演奏を、子どもたちは間近で見て感じることが出来、とても良い体験になったと思います。

(サポーター 柴崎 康久 観察レポートより)