
日時 | 2018年3月31日(土)13:00~14:00 |
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出演 | 吉川健一(バリトン)、石野真穂(ピアノ) |
概要 |
♪花 作詞:武島羽衣 作曲:瀧廉太郎
♪浜辺の歌 作詞:林古渓 作曲:成田為三
♪荒城の月 作詞:土井晩翠 作曲:瀧廉太郎
♪小さな空 作:武満徹
♪電話 作詞:薩摩忠 作曲:湯山昭
♪カタリカタリ 作:カルディロ
♪ヴォラーレ 作:モドゥーニョ
♪魔王 作:シューベルト
♪オペラ「カルメン」より 闘牛士の歌 作:ビゼー
♪アンコール ミュージカル「マイフェアレディ」より 君住む街
♪みんなで歌いましょう ふるさと 作詞:高野辰之 作曲:岡野貞一
一般的にお花見イベントは、予定日と桜の開花状態が合わないことも少なくなく、特に今年東京では、音楽会本番の数日前には満開となっていたことから、当日は桜が散ってしまっているのではと心配でした。が、会場の展示物を数多く手作りしたり、前日夜遅くまで会場設営を行うなど、主催者である「おさんぽ応援団」の並々ならぬ意気込みが通じたのか、ほぼ満開の状態で当日を迎えることができました!
お客様は、近隣の高齢者福祉施設をご利用のシニアの皆様が中心です。施設から会場のアートはるみまでサポーターが車椅子を押してご一緒し、施設と会場を結ぶ桜並木を通ってお花見を楽しんで頂いた後、音楽会を開催。終了後は、同じ道を通ってお花見を楽しんで頂きながら、施設までご案内するという形で行われました。
筆者(サポーター)も、お客様のお一人をお手伝いする機会を頂きました。その方がお住いの施設から音楽会会場までは、200メートル弱。健常者にとっては歩いて5分かからない、短い距離です。しかし道中で、ご一緒したそのお客様の奥様とお話ししたところによれば、日常の中では、その200メートル弱の散歩であっても、ちょっとした遠出気分を味わえる、貴重な機会だそうです。それに加えて、このイベントでは良い演奏を聴かせてもらえるので、今年も楽しみにしていた、と教えてくださいました。お手伝いする立場としては、そのようなお話を伺えたのはとても嬉しく、そのような機会をお手伝いできることに、やりがいを感じました。
音楽会の出演者は、吉川健一さんと石野真穂さん。吉川さんは、二期会に所属するオペラ歌手。声域はバリトンです。石野さんは、オペラを中心とした、クラシック音楽の伴奏ピアニスト。ともに経験豊富なプロの演奏家です。
音楽会では、「花」「浜辺の歌」などの馴染み深い日本の歌で、来場者を歌の世界に引き込んだ後、カンツォーネ曲から「カタリカタリ」、バリトン歌手の代表的なレパートリーの1つである、ビゼーのオペラ「カルメン」の「闘牛士の歌」と繋いで、徐々にクラシック音楽の、本格的な歌の世界に、来場者をいざなってくださいました。
曲間では、口の前に風船を持った状態で、吉川さんがお客様全員の席を周り、歌う瞬間の振動が伝わる風船をお客様に触ってもらうことで、オペラ歌手の出す声のエネルギーが、どれだけ大きいかを体感するチャンスや、オペラの演奏会場で飛び交う「ブラーボ!」を、お客様全員で大きな声で叫ぶ練習もあり、聴いて楽しむだけでなく、参加する機会もある、楽しい音楽会となりました。
吉川さんの演奏の最後は、シューベルトの歌曲「魔王」。この作品の歌詞は、ドイツ語なのですが、吉川さんは、歌の世界に入りやすくなるよう、演奏前に日本語による歌詞を朗読してくださいました。その朗読はただの朗読ではなく、登場人物の気持ちや感情が伝わる、本格的なお芝居といっていい内容。筆者はお手伝いする立場でありながら、聴いていて、すっかりその世界に飲まれてしまいました。朗読の直後に行われた演奏では、楽曲特有の、鬼気迫る感情が溢れていて、お客様には、音楽の楽しさだけでなく、聴いている人の感情さえも大きく揺さぶってしまう、音楽の奥深さを感じていただけたのではないでしょうか。
音楽会の最後を締めくくったのは、毎年恒例となっている「ふるさと」の合唱。指揮を務めたのは、長年このイベントとの関わりが深い、地域創造プロデューサーの児玉真さんでした。みんなで一緒に歌うことで、来年もこの場所に集い、共に音楽を楽しみたいという思いを、お客様だけでなく、このイベントに携わった全ての人々が共有できた気がしました。
(サポーター 野口泰司)