3月に第一生命ホールにて行われる「オペラの楽しみ～林美智子 90分の『コジ』！」に先駆けて、オペラ初心者や、これからもっとオペラを楽しみたいという方を主な対象に、全2回の講座を行いました。

講師は、豊富な知識と分かりやすいご説明に加え、親しみやすい人柄で、過去にも何度かレクチャーにご登壇頂いた有田栄先生にお願いしました。

1回目は「オペラってなあに？モーツァルトのオペラの魅力とは？」というテーマで、オペラの起源や歴史などのオペラについての導入を、さらにはモーツァルトとオペラについての説明をしていただきました。

中でも印象的だったのは、「オペラは総合芸術」とのご説明です。多くの方が、歌・演奏・衣装・セットなど豪華なオペラの舞台や写真などを見て「オペラは総合芸術」という事を感じていらっしゃると思いますが、有田先生がお話くださったのは、舞台上で見えている・聴こえている部分だけでなく、劇場内外で様々な人間の力が集まって行われている点です。舞台裏でのスタッフや、演出家、オペラ上演を支えているお金の話についてなど、きらびやかな舞台上の世界だけではない、裏方の苦労やこぼれ話、オペラが多くの人や社会に支えられていることが伝えられました。

有田先生がこのようなお話をされたのには訳がありました。「劇場の世界」を知るとオペラが生きて見えてくるそうです。「音楽は、その音楽が生まれた場所と切っても切り離せない、その場のための音楽がある。劇場には劇場で、教会には教会で生まれた音楽が、宮廷には宮廷だからこそ生まれた音楽がある。コンサートホールが登場し、そこで音楽を聴く事が一般的になると、今までの音楽のバックグラウンドがなくなってしまう。音楽が生まれた場を想像する事で、音楽がもっと生きてくる。」と、先生からの音楽鑑賞についての熱い思いとご提案をいただきました。

2回目のテーマは、「モーツァルト作曲のオペラ《コジ・ファン・トゥッテ》にせまる」でした。有田先生に加え、若手演奏家のみなさんも加わって、華やかな講座になりました。

前半の有田先生の講義では、オペラの配役のキャラクターの話や、「コジ・ファン・トゥッテ」を写真と共にあらすじを分かりやすく説明していただきました。

後半は、電子ピアノの伴奏にのせて、二人のソプラノ歌手の実演でした。歌手のお二人は、ソプラノと分類される同じ声部ではありますが、それぞれの声の特徴で役柄が決まったり、逆に役柄によって歌い方を変えたりと、実演を交えて説明がなされると、受講生たちも「なるほど」と腑に落ちたようにうなずいていました。短いアリアでも、役柄にはいりこんだ実演に、受講生のみなさんも感情移入されている様子でした。

2回のレクチャーを通じて、受講生のみなさんにとって、よりオペラが身近に感じられ、さまざまなオペラ公演を楽しむきっかけになったのではないでしょうか。