3月9日、中央区立常盤小学校で「4年生はじめてのクラシック」を行いました。
「中央区の国際教育推進パイロット校」でもある常盤小学校では、英語活動を推進する一方で、日本の伝統・文化をしっかり勉強したいという先生のご希望で、昨年度から、日本の伝統楽器の音楽をお届けしています。
今年度は、糸方(二十五絃箏・作曲)、囃子方、絵描方、語り方の4名からなるグループ「ジャパトラ」に初登場していただきました。囃子方の島村聖香さんは、第一生命ホールで定期演奏会を開催する日本音楽集団のメンバー、また糸方の中井智弥さんは、以前にもグランドロビーコンサートにご出演いただいたことがあります。
今回のプログラムでは、演奏を聴いてもらうだけでなく、子どもたちにも「ジャパトラ」の作品に参加してもらおうと考え、誰もが知る「さるかに合戦」を題材に選びました。事前の準備として、1月に絵描方の舌ガタロウさんに、「さるかに合戦」の下絵を送っていただき、子どもたちが、1人1枚ちぎり絵を完成させました。
それをパソコンに取り込んで上映できるように準備して、いよいよアウトリーチ当日です。
4時間目に「さるかに合戦」の練習をし、5時間目は、まず「ジャパトラ」の演奏をしっかり聴き、最後に「さるかに合戦」を他の学年児童の前で発表するというプログラムです。
4時間目、4年生11人が講堂にやってきました。自分のちぎり絵がスクリーンに大きく映し出されているのを見て盛り上がります。早速、みんなで「さるかに合戦」の中で歌う歌を練習するところからスタート。音楽は、中井智弥さんの作曲ですが、どれもとてもシンプルで日本語のイントネーションと響きにあっており、みんなすぐに覚えてしまいました。引き続き、全員の役割を決めます。パソコン操作をする「映し方」2名、島田聖香さんと音楽を担当する囃子方4名、登場人物から、カニ、昆布、蜂、栗、うす役が1名ずつ、猿役は、ジャパトラ語り方の本庄康代さん。各係に分かれてジャパトラの皆さんの指導で練習した後は、通し稽古。短い時間に、演奏家と子どもたちの集中力で「さるかに合戦」がみるみる出来上がっていくのにびっくりしました。4時間目の最後には、口上(歌舞伎風の上演前ご挨拶)も練習しました。
4年生の教室で「ジャパトラ」メンバーも一緒に給食をいただいた後、5時間目は3年生も講堂に集まって本番です。まずは「ジャパトラ」の演奏鑑賞から。中井智弥さんの演奏する二十五絃筝は、普通の十三絃の箏よりも絃の数が多いため低音から高音まで音域が広くすてきな響きがします。また弦がよく見えるように、前に斜めに傾けて楽器をセッティングしているので、演奏している手の動きが一目瞭然。ご自身でこの楽器のために作曲した「花のように」の演奏を、特に4年生は食い入るように見つめてよく聴いていました。お箏の体験、お囃子についてのお話の後は、1、2年生も合流し、箏による演奏を楽しみました。
いよいよ、最後に、4年生が参加しての「さるかに合戦」です。4時間目にもらったばかりの台本を片手に、映し方の男の子たちがスクリーンの絵を送り、カニ、昆布、蜂、栗、うす役は堂々と台詞を言い、囃子方が効果音で盛り上げ、全員で歌を歌い、見事に「さるかに合戦」を成功させました。
「さるかに合戦」は、もともとジャパトラがホールで上演するプログラムですが、子どもたちにちぎり絵と語りや音楽の一部で参加してもらうことによって、演奏を聴く時にも、子どもたちの興味関心がより深まったことを実感しました。1時間での練習で「さるかに合戦」を完成させた子供たちの集中力にも本当に感心しました。「低学年の前での発表は、達成感があった」と、後で子どもたちが書いてくれた手紙にもあり、満足度が高かったようです。
今回のようなプログラムは、受け入れてくださる先生方のご理解があり、また少人数の学校だからこそ可能だったとは思いますが、子どもたちの色々な可能性を感じられたアウトリーチでした。
トリトンアーツ スタッフ