この全6回のアウトリーチは、鑑賞に体験を合わせることで児童たちの音楽に対する興味・関心をさらに高め、音楽を愛する心を養うことを目的としています。また、本プログラムでは台本作りや絵を描くことを通して音楽科目だけでなく、国語科目や図工科目とも連動し、芸術分野での総合的な能力を引き出すことを期待し豊海小学校の協力を得て実施しました。
題材は「動物の謝肉祭」。
サン=サーンス作曲「動物の謝肉祭」は動物(中には不思議な動物も)をテーマにした小品曲集です。子供たちはコンサートに向けて、動物紹介の台本を作ったり、音楽を聴いてその動物を想像して絵を描くワークショップを通して準備をします。コンサート本番では、子供たちの朗読と絵画が田村緑さんと風の五重奏団による生演奏とコラボレートし、3年生をお客様として音楽室へ招待します。
【全6回の流れ】
1回目 「ピアノのひみつ」
ピアニスト田村緑さんによる「ピアノのひみつ」を体験してもらいました。一番身近なピアノの弦や響板の仕組みを知り子どもたちからは「ピアノって魔法の楽器なんだね~」という感想も。次回からのワークショップの道しるべとして、ムソルグスキーの「展覧会の絵」の曲をハルトマンの絵を見ながら聴くことによって絵と音楽の繋がりを感じてもらいました。最後はハンドベルでパッヘルベルのカノンを共演。「みんなで合奏して楽しかった」「みんなが一つになった感じ」という感想がきかれました。
2回目 CDで動物の謝肉祭を聴こう
CDで「動物の謝肉祭」全曲(14曲)を聴き、1曲ずつ自分が思い描いた動物を言葉で書き込む作業をしました。1曲ずつは短い曲だけれど、一気に14曲聴くのはさすがに疲れた様子。最後に各自好きな動物を第3位まで決めました。授業の後に子どもたちのワークシートをもとにTANスタッフが担当してもらう動物を振り分けました。
3回目 アンサンブルを聴いてみよう
田村緑さんがホルンとオーボエのお友達を連れてきました。ナチュラルホルンやイングリッシュホルンの紹介もあり、様々な楽器に子どもたちは新しい発見を沢山したようです。3名の演奏で動物の謝肉祭より「ぞう」「かっこう」「終曲」を聴きました。
4回目 動物の絵を描こう
同日にアウトリーチ終了後、図工室へ移動してそれぞれが担当する動物の絵を描きました。図鑑を見てCDを流しながらみんな想像力を膨らませていました。
5回目の前には、音楽の授業の中で動物の紹介をする台本を作ってもらいました。まず一人ずつが台本を書き、それをグループでそれぞれの文章の良い所探しをし、一つの文章にまとめてもらいました。2,3名の小グループのため、全員が発言をしなければ先に進めない状況ができたことが良かったというお話を後日先生から伺いました。
5回目 動物の謝肉祭コンサートリハーサル
本番に向けてのリハーサルです。自分が描いた絵がスクリーンに映し出されると照れ笑いしながらもどの子も嬉しそうな表情を浮かべました。朗読は緊張してかなかなか大きな声が出ません。コンサートの流れを覚えるだけでも大変そうな様子でしたが、明日は3年生のみんなに聴いてもらうことを説明すると「じゃあ読む文章覚えたほうがいいかなぁ?」と少し気合いが入ったようでした。
6回目 3年生に贈る、ぼくたち・わたしたちの“動物の謝肉祭”コンサート
いよいよ本番。クラスの代表者2名による司会でコンサートは進みます。「動物の謝肉祭」では、子どもたちの朗読が終わると音楽が流れて絵がスクリーンに映し出されます。昨日よりみんな大きな声で動物の紹介が出来ました。3年生は様々な楽器や初めて近くで聴く生演奏、4年生の描いた絵などに興味津々で飽きることなく楽しんでいる様子でした。来年は自分たちもやりたい!という感想が多く聞かれました。
今回のアウトリーチのプログラミングをしてくださったピアニストの田村緑さんはよく「人の興味関心は十人十色。いろいろな角度からアプローチして、何か一つでも『楽しい』『好き』と思って自分のお気に入りを見つけてくれたらうれしい。」と話しています。約3か月間のアウトリーチを通して、ピアノの下にもぐったことが忘れられない子、ホルンの象の鳴き声でびっくりした子、音楽を聴きながら一生懸命絵を描いた子、初めてコンサートの司会をした子など一人一人が心の中に自分のアウトリーチ経験を刻んでくれたらと思います。
また、後日行われた「第一生命ホールオープンハウス(7月23日)」では、田村緑さんのコーナーに11名の4年生の子どもたちが参加をして、動物の謝肉祭コンサート(抜粋)の再演をしました。第一生命ホールのステージ上で大人顔負けにお客様にしっかり伝わるように朗読をしてくれました。