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トリトン・アーツ・ネットワーク

第一生命ホールを拠点として、音楽活動を通じて地域社会に貢献するNPO法人です。
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アーティスト・インタビュー

今泉響平/太田糸音/尾崎有飛/桑原志織(ピアノ)

ごほうびクラシック 第8回 ピアノ・オールスターズII

 「ごほうびクラシック」第8回は、「年末スペシャル ピアノ・オールスターズII」と題して、注目のピアニスト4名による華やかなステージです。今年の出演ピアニストは、今泉響平、太田糸音、尾崎有飛、桑原志織。この4名は、第一生命ホールを「審査会場」の一つとして開催される全国規模のピアノコンクール「ピティナ・ピアノコンペティション」の最上位クラス「特級」にて、上位入賞を果たした実力派ピアニスト。すでに国内外での活躍が目覚ましく、数々のステージでその名を轟かせています。それぞれに思い出の詰まった第一生命ホールに集い、とっておきの曲目で客席に「ごほうび」なひと時をお届けします。
[聞き手・文/飯田有抄(クラシック音楽ファシリテーター)]

◆実力派ピアニスト4名がリクエストにお応え

 コンサートの第1部は、皆さまのリクエストによって曲目が決定する「ピアノ名曲の花束」。バッハ、ベートーヴェン、ショパン、シューマン、リストの名曲から、事前にトリトンアーツ公式WEBサイトの募集フォームからお寄せいただいた作品(受付期間9月20日~10月30日/詳細はこちら)を、4名がそれぞれ演奏します。いったいどんな曲が選ばれるのか、それをどなたが演奏するのかは当日のお楽しみ! クラシック音楽のコンサートとしては珍しいこの試みに、4名のピアニストたちも心を弾ませています。

今泉:皆様がどんな作品をお聴きになりたいのか、どういう曲を好きな方が会場にいらっしゃるのか、とても興味深いですね。どんな曲をリクエストいただくのか、今からドキドキです(笑)

20231203Gohobi_OtaShion_interview.jpg太田:私は邦人作曲家作品に積極的に取り組んでいきたいと考えてきましたし、最近ではJ.S.バッハの作品への思いが高まっています。今回は、自分がこれまで弾いたことのない作品にリクエストが寄せられるかもしれないですよね。とても楽しみです。

桑原:私はダイナミックな曲想の作品を多く弾いてきたので、そうしたイメージでリクエストをいただくのかも。逆に小品のご希望などがあってもおもしろいですね。これからの自分のレパートリーにも影響を与えられるかもしれません。

尾崎:コンサートの主催団体から希望をいただくことはよくありますが、お客さまからダイレクトにいただく機会は稀ですね。『この曲を聴きたい!』と思っていらっしゃる方がこの場にいらっしゃる----そう思いながら演奏できるのは特別な機会です。


◆生誕150年のラフマニノフにフォーカス

  コンサートの第2部は、2023年が生誕150年・没後80年となるロシアの作曲家セルゲイ・ラフマニノフ(1873~1943)をテーマにお届けします。自身も優れた演奏家であったラフマニノフのピアノ作品は、現在もピアニストたちにとって重要なレパートリーです。それぞれどのような作曲家像を抱いているのか伺いました。

20231203Gohobi_OzakiYuhi_interview.jpg尾崎:ラフマニノフは、偉大な作曲家チャイコフスキーとも、名ピアニストのホロヴィッツとも同じ時代を生きています。歴史的な音楽を、現代の私たちへと橋渡ししてくれるような存在ですね。ピアニストとしても指揮者としても活躍した彼は、ロシアからアメリカに亡命し、広い見地から自分の音楽を開拓していった人です。

今泉:僕は8年間モスクワに留学していた間に、ラフマニノフが1年の3分の1を過ごしたというイワノフカという郊外の別荘を何度か訪れました。そこには、公園のように広い庭があり、とても自然豊かな環境でした。ビリヤード台などもあり、リラックスして作曲に没頭していたラフマニノフの姿が目に浮かび、人間味溢れる音楽家というイメージを抱きました。

桑原:一般的にはメロディアスでドラマティックな音楽を残したイメージが強い作曲家かもしれません。しかし、アメリカに亡命し、ブランクも経験した彼の音楽は次第に複雑化していきました。ピアノ協奏曲も第3番と第4番では別人のようです。骨太な面もあれば、ナイーブな表情もあります。時代とともに作風が変わっていった側面にも注目していただきたい作曲家です。

太田:ラフマニノフの自作自演の録音が残されています。本人の演奏は、楽譜に書いてあること、そこから読み取れるイメージを超越するような解釈を聴かせてくれます。宇宙的な広がりを見せてくれる音楽家ですね。


 ラフマニノフは優れた編曲家でもありました。今泉さんと太田さんはラフマニノフのアレンジャーとしての一面を伝えます。


20231203Gohobi_ImaizumiKyohei_interview.jpg今泉:僕はラフマニノフが編曲したJ.S.バッハの『無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番を取り上げます。バッハが意図した和声とは異なる、ラフマニノフの不思議でおしゃれな世界が展開していきます。そしてルーウェンサールという現代のピアニストが編曲したラフマニノフの歌曲『ここは素晴らしい場所』も取り上げます。原曲のピアノ伴奏に歌の旋律をシンプルに乗せたような編曲です。このアレンジは僕の採譜による楽譜が出版されたところです。

 太田さんはクライスラーの名曲「愛の悲しみ」(原曲はヴァイオリン)のラフマニノフによるピアノ独奏版を聴かせてくれます。
 尾崎さんと桑原さんはピアノのために書かれた小品やソナタを取り上げます。

尾崎:協奏曲や交響曲など壮大な作品イメージの強いラフマニノフですが、僕はあえて小品に光を充ててみます。有名な前奏曲『鐘』のほか、爽やかなト長調の前奏曲、強い感情の乗った"言葉"を感じる練習曲『音の絵』op.39-5を選びました。


 太田さんと桑原さんは、現在ともにベルリン芸術大学大学院で学んでいます。ベルリンでは食事やコンサートにも出かける仲とのこと。そんな二人が今回2台ピアノで初共演。ラフマニノフによる「組曲」第2番を披露します。


20231203Gohobi_KuwaharaShiori_interview.jpg太田:憧れの先輩だった桑原さんとの初共演が楽しみです。ピアニスト泣かせなところもあるパワフルな作品ですが、細部から全体まで絵画のように美しく、構築力のある作品像をしっかりお届けしたいです。

桑原:キャッチーな旋律のみならず、繊細で複雑な面にも注目していただきたいですね。このコンサートで、未知のラフマニノフ像に出会っていただけたら嬉しいです。