津軽三味線の兄弟ユニット「吉田兄弟」の兄、吉田良一郎さんの発案で結成されたWASABI。邦楽界を代表する4人の奏者が生み出す新感覚のグルーヴは、ジャンルを超えて今大きな注目を集めています。第一生命ホールへの初登場に向けて、メンバーのみなさんに抱負などをうかがいました。
このユニットの発案者は吉田さんということですが、その理由は?
吉田:子どもたちに生の和楽器の音を届けたい...それが1番の理由ですね。今の子どもたちって、和楽器の音色をほとんど知らないんです。つまり和楽器に対するイメージが真っ白。それならかしこまった古典よりも、カジュアルな服装でわかりやすい音楽を聴いてもらったほうが、和楽器により良いイメージを持ってもらえるんじゃないかと思ったんです。
元永:実際、手応えはありますよね。高校の公演では出待ちがあるとか(笑)。紋付き袴の時はみなさんちょっと近寄りがたいのか、そんなことはないですから。
市川さんはご実家が家元、美鵬さんはお祖父様が流派の創始者というお家柄ですが、そのことに反発を覚えていた時期もあったとか。
市川:箏ってカッコ悪いというイメージがあったんです。だから高校まではメタルバンドでギターを弾いてた(笑)。でもある時、自分はイメージだけで箏をとらえて楽器の本質を見ていなかったんじゃないか、と気づいたんです。だから、今の子どもたちにも本質を見せてあげれば興味を持ってもらえると信じて活動を続けてるんですけど。
美鵬:私は小さい頃から強制的にやらされて、それがいやで1度飛び出しちゃった(笑)。その頃は、太鼓をやってるというと友達からからかわれたんですよ。でも今の子たちはあまりそういう感覚はなくて、素直に太鼓の音が好きとか、尺八を吹く姿がカッコイイと思ってくれるみたい。だから特に構えずに、バンドのライヴという感じで聴いてくれますね。
資料には「新・純邦楽ユニット」とありますが、どこが「新」なのでしょうか。
元永:和楽器というと一括りにされがちなのですが、津軽三味線と太鼓は民謡を、箏と尺八は邦楽の古典を演奏することが多く、これらの楽器がいっしょにやることはほとんどなかったんです。そこがまず新しい。
吉田:それと音楽の作り。各人は伝統音楽の古典的フレーズを弾いてるんだけど、曲の構造は今風の作りになっている。それを和楽器だけでやっている、というところも「新」だと思います。
WASABIとしては第一生命ホール初登場となるわけですが、元永さんと市川さんは日本音楽集団で何度もこのステージに立たれています。どんな印象を持たれていますか。
元永:すごくきれいですよね。卵形というか楕円型で、包み込まれるような感じ。あと、音も素晴らしい。
市川:そう。日本音楽集団では生音でやるのですが、とにかく音がいい印象があります。
最後にコンサートの聴きどころ、抱負などをおきかせください。
吉田:コンサートの中では楽器体験のコーナーも設ける予定で、とにかく楽しくわかりやすく和楽器の魅力をお伝えしたいですね。WA(和)+SABI(サビ=曲の盛り上がりの部分)のユニット名どおり盛り上げますので、みなさんぜひいらしてください!
元永:WASABIの音楽はメロディーはわかりやすいし、1曲の長さもコンパクト。各楽器の聴かせどころもふんだんにあるので、きっとみなさん、楽しんでいただけると思いますよ。
美鵬:帰りにビールがおいしくなるライヴにしたいですね。
元永:ホールを出ればお店もたくさんあるし(笑)。
[聞き手・文/藤本史昭]