保育園や幼稚園のアウトリーチは、若手演奏家支援事業「
室内楽アウトリーチセミナー」を修了した演奏家の実践の場となっており、今年も2つの弦楽四重奏グループをつくり、それぞれ2~3箇所の園でアウトリーチを実施しました。アウトリーチまでは、園を訪問して打合せやプログラムを決める話し合いをしたり、リハーサルを重ねて最後はトリトンアーツスタッフの前で模擬アウトリーチを行ったりと入念な準備をしています。グループそれぞれで基本のプログラムを考え、各園のリクエストや年齢・時間によって臨機応変に対応できるようにしています。
子どもに馴染みのある曲をただ演奏するのではなく、「何を伝えたいのか?それをどのように伝えるのか?」ということを考えるのは時間がかかることですが、アウトリーチに限らずすべての演奏活動に役立つ機会ではないかと思います。豊洲保育園、晴海こども園、明石幼稚園では以下のようなプログラムを実施しました。
(基本プログラム 20分間)
M1 グラズノフ:5つのノヴェレッテ Op.15より第2曲目 オリエンタル(東洋風に)
楽器紹介
M2 アンダーソン:プリンク・プランク・プランク
M3 ボロディン:弦楽四重奏曲 第2番 ニ長調より第1楽章
M4 リクエストの歌⇒学年ごと
M5 ハイドン:弦楽四重奏曲 第39番(第32番) ハ長調 Op.33-3 Hob.III:39 「鳥」より第4楽章
アンコールとして園歌
―1曲目はワクワクするような曲で始まり、楽器紹介では一つ一つの楽器を丁寧に紹介。弓のお話をしたところで、弓を使わない曲(ピッチカートの紹介)を演奏。次にハーモニーがきれいな曲でアンサンブルの魅力を伝え、ここで少しリラックスして事前にリサーチをした子どもたちの好きな歌との共演。最後に、弦楽四重奏を通して音楽の楽しさを感じてもらえるような曲を演奏して終わり。―
晴海こども園は、0~2歳(15分)、3歳(20分)、4~5歳(30分)と3回に分けて実施をしましたが、どの年齢の子も「次はなんだろう?」とよく耳を澄ませて集中して聴いている様子でした。
4~5歳児の時には、始まる前に園長先生より「今日お誕生日の子が1人いるので、ハッピーバースデーを演奏してもらえないか?」というリクエストがあり、急遽アンコールの前に即興でお祝いをし、生演奏とみんなの歌で喜んでもらいました。
保育園・幼稚園でのアウトリーチでは保護者の方が涙しながら聴いているのも印象的です。小さな子ども達に生の音楽に触れる機会を提供すると同時に、保護者の方にとっては子育てで忙しい毎日で忘れかけていた生の音楽が心にふっと触れる機会でもあるのだなと実感します。
(トリトン・アーツ・ネットワーク スタッフ)