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トリトン・アーツ・ネットワーク

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アーティスト・インタビュー

こぱんだウインズ(上野耕平&佐藤采香)

ごほうびクラシック 第3回

 3回目を迎える「ごほうびクラシック」に登場するのは「こぱんだウインズ」。2011年、東京藝術大学の学生を中心に結成され、いまや吹奏楽部員の中学・高校生にとって憧れの存在となった吹奏楽団「ぱんだウインドオーケストラ」のメンバーが、この日のために組まれた特別編成でクラシックの名曲を届けます。ヘンデルの「水上の音楽」、シューベルトのピアノ五重奏曲「ます」、ガーシュインの「ラプソディー・イン・ブルー」など、誰もがどこかで聴いたことのあるメロディ満載のプログラム。上野耕平さん(サクソフォン)と佐藤采香さん(ユーフォニアム)に、今回の公演の聴きどころや日頃のリラックス法について、お話を伺いました。

[聞き手・文/原典子(音楽ライター)]

金管楽器(トランペット、ホルン、トロンボーン、ユーフォニアム、テューバ)にサクソフォンとピアノという編成は今回が初ですか?

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上野:いつも一緒に演奏している仲間ですが、この編成では初めてです。

佐藤:トランペットとトロンボーンが明るい音色、ホルン、ユーフォニアム、テューバ、サクソフォンが響きの多い、どちらかというと暗い音色に分類されると思うのですが、こうした音色が新しい編曲によってどのようにブレンドされるのか、今から楽しみです。今回初めて編曲をお願いした後藤元信さんと孝橋人誌さんは吹奏楽のスペシャリストですから、きっと面白いものになると。

吹奏楽ファンだけでなく、幅広いクラシック・リスナーにとって親しみやすいプログラムですね。

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上野:吹奏楽の演奏会に行ったことのない方にも興味を持っていただけるようなプログラムにしました。それと同時に、吹奏楽をやっている子どもたちにとっても、自分たちが演奏する曲だけでなく、いろいろな音楽に触れて、その奥深さを知ってほしいと思って。

佐藤:親しみやすさも大切な要素ですが、演奏側としてはチャレンジングなプログラムでもあります。ヘンデルの「水上の音楽」より「アラ・ホーンパイプ」はトランペットとホルンが印象的ですが、今回はそこに細かい動きができるサクソフォンが加わってどうなるか。私はバロック音楽が大好きなので、バロックのフレージングにもこだわってリハーサルをしていけたらと思います。シューベルトのピアノ五重奏曲「ます」の第4楽章は、上野くんがサクソフォンで弦楽器のレパートリーに挑戦しているのを見て羨ましく思い、私たち金管楽器もトライしてみたいと提案しました。

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ガーシュインの「ラプソディー・イン・ブルー」は大編成のぱんだウインドオーケストラの演奏もカッコよかったですが、それとは違ったものになる?

上野:まったく違う編曲になります。もしかしたらオーケストラ用に編曲される前のジャズ・バンド版に近いものになるかもしれないし、ならないかもしれません。お楽しみに!

佐藤:マスネの「タイスの瞑想曲」は上野くんのソプラノサクソフォンと、ピアノの高橋優介くんのデュオでお届けします。

前久保諒さんの「PANDASTIC!!」 は、ぱんだウインドオーケストラのテーマソングともいうべき曲ですね。

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佐藤:これも、今回のために前久保さんに編曲してもらいました。2013年にぱんだウインドオーケストラのために作曲されましたが、毎回変化と進化をするぱんだウインドオーケストラのサウンドや音楽を「PANDASTIC!!」で聴くことによって「今のぱんだ」がよくわかるというわけです。

2011年に結成した当時のことを、お聞かせいただけますか?

上野:藝大では1年生のときにだけ吹奏楽の授業があるんです。最後に発表会があって、その授業は終わりになるのですが、「せっかくなら続けようよ」と言い出した学生が何人かいて、それがはじまりですね。

佐藤:言い出しっぺです(笑)。いろいろな吹奏楽を聴くなかで、「私たちにできることがもっとある!」と思ったんです。スクールバンドなどでは「揃っていることが美しい」「みんなで一つにまとまるための音楽」といった見方をすることもありますが、それだけではない、吹奏楽には芸術性を追求する価値と可能性があるし、このメンバーとなら本気で取り組めると。

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上野:結成当初からの一貫した目標は、吹奏楽のオリジナル作品の魅力を深め、広めていくことです。オーケストラと同じことをするのではなく、吹奏楽にしかできないことを追求したい。それは今回の編曲や演奏からも感じていただけると思います。

楽しみにしています。ソロにアンサンブルにオーケストラにと、忙しい毎日を送られていると思いますが、自分への「ごほうび」やリフレッシュ法がありましたら教えてください。

上野:まず、美味しいものを食べることですね。どんなに忙しくても、食事で妥協はしません。

上野さんは鉄道好きとしても有名ですね。

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上野:いろいろな土地に、大好きな音楽を演奏しに行くと、その途中で大好きな列車に乗ることができて、行ったら美味しいものが待っていると。一連の流れが完璧なんです。

佐藤:私は盆栽にハマッています。

それはシブいですね!

佐藤:盆栽の魅力は自分の思い通りにならないこと。伸びてほしいと思った枝は伸びず、別のところが出てきてしまったりするのが予想外に美しかったりして。年単位の息の長い時間のなかで変化していく、一種のコミュニケーションですね。人生を学んでいるような気がします。

20221126TakahashiYusuke_interview.jpgメンバーの皆さん、それぞれご自分の世界を持っていらっしゃって素晴らしいです。

上野:団体であっても、まず「個」ありきですよね。オーケストラでも各々の持ち味をぶつけ合い、いかに融合させるかが勝負なわけで。そのためには、メンバーそれぞれが忙しく活躍することが大事だと思っています。もちろんリフレッシュも!

楽しいお話をありがとうございました。