活動動画 公開中!

トリトン・アーツ・ネットワーク

第一生命ホールを拠点として、音楽活動を通じて地域社会に貢献するNPO法人です。
Menu

アーティスト・インタビュー

(C)井村重人

石田泰尚(ヴァイオリン)阪田宏彰(チェロ)
YAMATO String Quartet

ごほうびクラシック 第2回

 日々の仕事や家事で固まってしまった心と身体を、音楽のシャワーでほぐし、ととのえるコンサート・シリーズ「ごほうびクラシック」。Vol.2には神奈川フィルハーモニー管弦楽団のソロ・コンサートマスターを務め、室内楽でも活躍する石田泰尚さんと、ジャンルを超越した活動で弦楽四重奏の可能性を追求するYAMATO String Quartetが登場。昼の部は“組長”こと石田さんの美学を感じられるヴァイオリン・リサイタル、夜の部は熱いロックで盛り上がるライヴを聴かせてくれます。それぞれ約1時間のプログラムに込めた意図や日頃のリフレッシュ方法などについて、石田さんと阪田宏彰さん(YAMATO String Quartetチェロ奏者)にお話を伺いました。

[聞き手・文/原典子(音楽ライター)]

14時開演の昼の部は、クライスラー、ピアソラ、映画音楽が並ぶ彩り豊かなプログラムですね。

石田:お客さんがリラックスできるような曲を選んでみました。クライスラーはヴァイオリニストなら必ず取り上げる作曲家で、どの曲も親しみやすいですから。ピアソラは昨年が生誕100年、今年が没後30年のアニヴァーサリーということで入れようと。バンドネオン奏者の三浦一馬ともピアソラを一緒に演奏していますが、タンゴとクラシックの要素が入り混じっているピアソラの音楽は、僕には向いているように感じています。

阪田:僕から少し補足させていただきますと、石田の得意とする美しい、それでいて悲しげな音を基調として、びっくりするぐらい明るいところまで広げたプログラムになっていると思います。昼の部は悲しさと明るさのコントラストが聴きどころですね。

20220919IshidaYasunao(C)ImuraShigeto_yoko.JPG石田:美しい曲、好きなんで。

なるほど。一方、18時開演の夜の部は、往年のロック・ナンバーも含めた濃厚なプログラムになっています。

阪田:夜のイメージをもとに選曲していきました。ボロディンの弦楽四重奏曲第2番は第3楽章の〈ノクターン〉が有名ですよね。《屋根の上のヴァイオリン弾き》より〈サンライズ・サンセット〉は石田のヴァイオリンの妙技を存分に味わえる曲です。キング・クリムゾンでは《21世紀のスキッツォイド・マン》を演奏する機会がいちばん多く、《エピタフ(墓碑銘)》は滅多に演奏しないのですが、今回は夜のイメージということで入れてみました。ジミ・ヘンドリックスの《リトル・ウィング》は我々のロックのレパートリーの中でもブルース寄りの曲ですが、これを聴いたあとに夜の勝どき橋を歩くのもいいかなと。

YAMATO String Quartetは1994年の結成以来、日本音楽からロックまで幅広いジャンルの作品を演奏していらっしゃいます。今でこそ、ボーダーレスに活動するクラシックの演奏家も増えましたが、皆さんはそのパイオニアと言える存在ですよね。

阪田:僕は学生の頃、モルゴーア・クァルテットの演奏するプログレッシヴ・ロックにすごく憧れていました。ですから、パイオニアは彼らの方かもしれませんね。ただ、モルゴーアとYAMATOが違うのは、僕たちはリアルタイムにプログレを聴いて熱狂したモルゴーアの方々よりひと回り下の世代であるということ。僕たちにとってプログレは、すでに歴史上の作品であるという意識があって、もちろん愛情は持っていますが、それと同時に、作品がメンバーの個性に合うかを客観的に判断して選曲・編曲を進めているところがあります。

作品に対する距離の置き方が違うと。

阪田:そうですね。僕たちはまず、どの曲を演奏するかという選曲作業が非常に難航します。いつもアレンジをお願いしている近藤和明さんに、たとえば10曲のアレンジを依頼したら、のちのちずっと演奏し続ける曲が、そのうち2~3曲あればいい方かもしれません。

おふたりは昔からロックをよくお聴きになるのですか?

石田:あまり聴いてこなかったですね。日本のアーティストとかは聴いたかな。

阪田:僕はわりと広く浅く聴いてきましたが、1960~70年代のロックが面白いとわかったのはYAMATOをはじめてからですね。1980年代に流行っていたロックのオリジナルはここにあったんだと、あらためてその力に触れたような感覚がありました。

ところで、お忙しい毎日のなかで「自分へのごほうび」をすることってありますか?20220919YAMATO_SQ(C)ImuraShigeto_yoko.jpg

石田:食にも興味がないし、お酒もまったく飲まないので、なんだろう......こたつに入って、テレビやYouTubeを見ながら寝ることかな。

阪田:石田の特技はどこでも寝られることです。猫みたいに、どこでも寝てますよ(笑)。僕は普通に、美味しいものを食べることかな。仕事が終わったら何を食べに行くかをずっと考えています。

石田:寝るのは大事です。

阪田:本番前のリフレッシュタイムは、メンバー4人とも好き勝手に過ごしているのですが、僕と石田は寝ていることが多いですね。

本番直前にですか?!

阪田:本番前のリハーサルを早めに終わらせて、寝る時間をとっています。少しでも寝るとスッキリするので。

名演の秘訣ですね。とても興味深いお話をありがとうございました!