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トリトン・アーツ・ネットワーク

第一生命ホールを拠点として、音楽活動を通じて地域社会に貢献するNPO法人です。
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アーティスト・インタビュー

(C)大窪道治

トリトン晴れた海のオーケストラ 矢部達哉(コンサートマスター)&岡田全弘(首席ティンパニ奏者)インタビュー

晴れオケ「第九」インタビュー

日本では毎年12月にたくさんのオーケストラ、合唱団が演奏する作品として知られるベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付」。これは日本だけの「現象」なのだけれど、音楽ファンにとっては、この壮大な作品に何度も接することができて、うれしいものである。その『第九』が初演されたのは1823年。ベートーヴェンが残した最後の交響曲であり、しかもオーケストラで演奏されるだけでなく、最後の楽章に人間の声が加わるという壮大な構想を持つ交響曲として、ベートーヴェン以後の作曲家たちにも大きな影響を与えた作品でもある。2018年からベートーヴェンの交響曲全曲演奏会「ベートーヴェン・チクルス」を続けてきた「トリトン晴れた海のオーケストラ」は、これまでの4回の演奏会を経て、いよいよその大作『第九』に挑戦することになる。
コンサートマスターの矢部達哉氏と、首席ティンパニ奏者の岡田全弘氏に話を伺った。

[聞き手/文:片桐卓也(音楽ライター)]

 「これまでの演奏会でも様々なハードルを超えてきたと思いますが、高い所まで来れば来るほど、さらに高い所が見えてくる、そんな感じがしています。しかも今度は『第九』という大作で、おそらく指揮者なしでこの作品に挑もうと考えている演奏家は、世界でもそうたくさんいないと思うので、ちょっと足がすくむような感じさえしますね」とコンサートマスターの矢部達哉は語る。矢部自身も、また「晴れオケ」に参加する演奏家たちも、何度も演奏したことがあるはずの作品が『第九』である。 「だからこそ、もう一度、すべての音符を見直したいと思います。ここはこんなメロディだったのか、ここではこんなふうに転調する のか、ここはこんなリズムだったのか、などとひとつひとつを楽しく、そして新鮮に見つめ直したい。今はじめて『第九』を演奏する、そんな気持ちで演奏に臨みたいです」(矢部)

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 ベートーヴェンの交響曲の中では打楽器のティンパニが重要な役割を持っていることが多いが、この『第九』では特に第2楽章でティンパニが目立つように書かれている。「晴れオケ」でティンパニを担当する岡田全弘(読売日本交響楽団首席ティンパニスト) はこう話す。 「『第九』は1番から8番までの交響曲よりもダイナミック・レンジが広く、ティンパニの出番が多いのが特徴です。前回演奏した 8番でファの音のオクターブを二台のティンパニで叩かせるという革新的な部分を『第九』の二楽章にも登場させています。そのほか ベートーヴェンはトレモロとリズムを書き分けていて、ほとんどトレモロに聴こえる箇所が、実は32分音符であったりします。そ のあたりを注意して聴いていただくのも面白いかと思います」

 第4楽章に登場する声楽のソリストには澤畑恵美、林美智子、福井敬、黒田博という日本を代表する声楽家たちが集まった。合唱は第一生命ホールで定期演奏会を行う東京混声合唱団が参加する。オーケストラもこれまでよりはちょっとだけ弦楽器の人数を増や す。指揮者なしで『第九』を演奏する、そしてそれを聴くというチャンスも滅多にないこと。 このベートーヴェン生誕250周年の年に、その貴重な演奏会を体験してみよう。