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トリトン・アーツ・ネットワーク

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アーティスト・インタビュー

山田和樹

東京混声合唱団第234回定期演奏会

東京混声合唱団第234回定期演奏会に向けて
東京混声合唱団音楽監督 山田和樹

 田中信昭先生より「東混に新しい風を入れて欲しい」と、音楽監督という大任を仰せつかることになり、4月18日には就任記念として東混定期演奏会を指揮させていただきます。

 プログラミングに当たって、どのようなものが「新しい風」になるのか私なりに熟考し、東混の現在・過去・未来が俯瞰できるような曲を選びました。

 実は自分はバッハを演奏することをずっと敬遠してきました。何か音楽に対して自分の憧れるロマンティシズムと距離がある気がしていたのです。ただ同時に、「音楽の父」とまで言われるバッハの作品を演奏することで、新しく見えてくる世界が必ずあるはずだとも思っていました。今回バッハを取り上げることは、私自身にとって大きな挑戦であり、新しい一歩になります。考えてみれば、東混自体もバッハというイメージはあまりないかも知れません。私と東混が織りなすバッハ、いわゆる正統(何をもって正統とするかは置いておいて)ではないかも知れませんが、精一杯やってみようと思っています。

 バッハという古典作品に対して、今現在活躍している海外の作曲家の作品も紹介できればと思い、自分なりにリサーチすること1年間。本当に合唱界は奥深く、数多の作曲家と作品群があるのですが、自分の感性と勘だけを頼りに、ルネ・クラウセンの作品に行き当たりました。全くの調性音楽であり、このミサ曲に関しても、自分の心にスッと「美しく」入ってきた音楽です。おそらく日本初演になると思うのですが、是非皆様に聴いていただきたいと選曲しました。

 東混は1956年の創立当初より「日本の合唱曲を創る」ことを活動目標の一つに掲げてきました。新しい作品を委嘱し初演するという素晴らしい活動を踏襲しながら、これからは「再演」にも力を入れていきたいと思っています。間宮芳生さんの『鳥獣戯画』については、東混の委嘱作品ではないものの、ステージ初演(放送初演と別)は東混が行いました。これぞ東混ならでは、という世界が表出できるように頑張ります。自分と同世代のコントラバス、打楽器の方々との共演も楽しみです。

 そして三善晃さんの『地球へのバラード』。私は終曲の「地球へのピクニック」だけは何度も演奏してきたのですが、全曲を取り上げるのは初めてになります。三善先生にお会いすると、先生はいつも後光に包まれているようで、自分はその圧倒的なオーラを前に、喋ることができなくなってしまうのでした。なので会話らしい会話した記憶がないのですが、東混との『レクイエム』の演奏前に先生に初めてお会いして、初対面の挨拶もちゃんと出来ないままに「先生の世界に近づけますかどうか・・」とだけ何とか言葉を発することが出来た自分に対し、三善先生は「信じてますから・・」と仰って下さったことは一生忘れられない思い出です。今や、地球をも宇宙をも見渡す世界に往かれてしまった先生。我々は先生の作品の中に宇宙を見て、今ある「生」を精一杯燃焼させたいと思います。

 東混の音楽監督就任に際して、自分の掲げる目標は「東混を世界へ!」です。東混とは数えきれないくらい演奏会を一緒にしてきましたが、2012年のクセナキス『オレステイア』公演での彼らの鬼気迫る表情、本当の真剣勝負で作品と対峙する姿を目の当たりにした時に、不遜ながら「自分が東混を世界に連れて行かなければ!」という思いが雷のように身体を貫いたのです。これから東混と共に、世界のステージで認められるべく活動を拡げて参ります。

 お客様の応援が何よりの力の源になります。新しい東混を見守っていただきながら、どうか進化していくパワーを与えていただけたらと思います。


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