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トリトン・アーツ・ネットワーク

第一生命ホールを拠点として、音楽活動を通じて地域社会に貢献するNPO法人です。
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レポート

基本情報

日時 2021年1月26日(火)
①10:50~11:35
②11:40~12:25
③13:35~14:20
出演 金子三勇士(ピアノ)
概要 実施会場:有馬小学校 第二音楽室
対象者:4年生3クラス
人数:87名
助成等:文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)|独立行政法人日本芸術文化振興会

レポート

【プログラム】

♪バルトーク:《ミクロコスモス》より「オスティナート」
♪ショパン:英雄ポロネーズ
♪リスト:愛の夢
♪リスト:ハンガリー狂詩曲第2番より


【レポート】
 燕尾服を着た金子さんが颯爽と登場。ピアノの前でにっこりとお辞儀をして、椅子に座ってすぐさま<オスティナート>の演奏をはじめます。aIMG_7571.jpg最初の一音が鳴った瞬間、勢いよく連打される和音の音量と響きの豊かさ、どーんどーんと轟く低音に、びっくりした子供たちの頭が、ぴょこん、ぴょこんと、教室のあちこちで椅子から飛び上がっています。

疾走感溢れる音楽のポジティブなエネルギーに圧倒された模様で、耳も目も心も一瞬にして金子さんに皆くぎ付けになっています。「やばいっ!」と口走る子や、曲と一緒に走っているのかのように手足をばたつかせる子、目と口をあんぐりと空けている子、大きく見開いた目を輝かせながら(音にはださないで)拍手のアクションをとる子もいました。

最初の曲が終わったところで、金子さんがクイズ形式で自己紹介を始めます。

「私は何人でしょう?」「正解は、日本人と外国人の両方です」と言う金子さんに、「ハーフだ!」と、すかさず子どもから声があがります。「そう、ハーフ。ハーフって英語で半分っていう意味ですよね。あなたは半分ですよと言っているみたいなので、ダブル(2つ)という言い方もあります」と金子さん。

続いてピアノの紹介もクイズ形式で。

楽器には大きくわけて【打楽器】【弦楽器】【管楽器】の3種類がありますが、ピアノは何楽器かな?

手を挙げていない子が挙げている子に「えー、本当にそう思うの? 」と茶々をいれるなど、みんな積極的にクイズに参加しています。aIMG_7654.jpg

「正解は・・・打楽器であり弦楽器でもある。私とおなじダブルなんですね。だから僕たちとっても仲がいいんです」ピアノの中には沢山の弦が張ってあり、鍵盤を押すと中にあるハンマーが弦を打って音が出ることを金子さんが伝えると、子どもたちはピアノをよく見ようと椅子から中腰で立ち上がる等、その目で実際に確かめてみたくてたまらない様子です。

子どもたちのピアノへの興味関心が高まったところで、2曲目の<英雄ポロネーズ>では、ピアノに近づいて好きなところで自由に見て・聴く体験をしてもらいました。感染症対策を考慮し、全員一度にではなく、3つのグループに分かれて順番にピアノの周りに集まります。aIMG_7537.jpg

ピアノの下に潜ったり、ハンマーが弦を叩くところをのぞき込んだり、金子さんの華麗な運指をながめたり。

子どもたちはもちろん、先生も興味津々に参加してくださいました。

真っ直ぐで堂々と輝かしい英雄ポロネーズの後は、<愛の夢>が演奏されました。

「夢とは、夜に見る夢もそうですし、将来の夢もそうです」「愛は愛情の愛ですよね。恋愛に限らず、家族の愛情もそうですし、友情とか、ペットとか、愛着のある物など、それらも全部愛ですね」

「この曲は愛を夢見る作品ですので、大事な人や物に優しく接するようにピアノに優しく接したいと思います」と金子さん。

甘美なメロディについつい感傷的なメロドラマを連想しがちですが、もっと深く大きな想いがこの曲に息づいている事にハッとさせられます。

金子さんからの「静かな曲なので、静かに聴いてみるといいかもしれません。目を閉じて、リラックスして聴いてください」との呼びかけに、子どもたちは先程の興奮状態から一転し、じっくり味わうように聴き入っていました。

最後に「どんな時も諦めずチャレンジし続けたリストの曲でお別れしたいと思います」と、<ハンガリー狂詩曲第2番より>が演奏されました。

リストは金子さんのもう一つの祖国、ハンガリーを代表する作曲家で、ピアノ・リサイタルやコンサートツアー、チャリティ・コンサートを歴史上初めて実現するなど、常に新しい夢・希望に挑戦し続けた人。

そして金子さん自身も、「プロのピアニストになりたい」という夢の為に、なんと6歳の時に家族と別れて単身ハンガリーに渡り、どんなに大変で苦しくても諦めず、挑戦し続けた人です。aIMG_7621.jpg

リストのことやご自身の体験を語りながら「ただ夢見るだけでは叶わないけれど、挑戦し続けて、努力し続ければ、夢は叶うものです」と仰る金子さんの温かくも力強い言葉と、言葉同様エネルギー満ち溢れた演奏に子どもたちの心は揺り動かされ、刺激を受け、勇気づけられたのではないでしょうか。

コンサートが終わり、教室を出てゆく子供たちの曇りなき瞳と晴れやかな笑顔がすべてを物語っていました。

夢や希望に満ち溢れた、人生観が変わるような素晴らしいアウトリーチでした。

(トリトンアーツスタッフ 観察レポート)

プロフィール

金子三勇士(ピアノ)  Kaneko Miyuji
1989年日本人の父とハンガリー人の母のもとに生まれる。6歳で単身ハンガリーに渡りバルトーク音楽小学校に入学、2001年からは11歳でハンガリー国立リスト音楽院大学(特別才能育成コース)に入学。2006年に全課程取得とともに帰国、東京音楽大学付属高等学校に編入する。東京音楽大学を首席で卒業、同大学院修了。2008年、バルトーク国際ピアノコンクール優勝の他、数々の国際コンクールで優勝。第22回出光音楽賞他を受賞。これまでにゾルタン・コチシュ、小林研一郎、ジョナサン・ノット他と共演。国外でも広く演奏活動を行っている。NHK-FM「リサイタル・パッシオ」に司会者としてレギュラー出演。 2019年5月には新譜CD「リスト・リサイタル」をリリースした。コロナ禍でも、オンラインを活用したさまざまな企画を発信中。2021年は日本デビュー10周年を迎える。キシュマロシュ名誉市民。スタインウェイ・アーティスト。オフィシャルHP  http://miyuji.jp/
©Ayako Yamamoto