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オペラ講座~『蝶々夫人』をもっと楽しむ
講座レポート2

2021年3月2日

第一生命ホールで3月20日に行う「室内楽ホールdeオペラ~佐藤美枝子のオペラ『蝶々夫人』」の関連企画として、2月13日に実施した「オペラ講座~『蝶々夫人』をもっと楽しむ」から、レポート第2弾をお届けします。

<講師>3月の公演の演出を担当する中村敬一さん、音楽監督・ピアノの服部容子さん、蝶々夫人を歌うソプラノ佐藤美枝子さん

オペラ講座レポート その1はこちら

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4.蝶々さんって誰?

蝶々夫人にもモデルになった女性が色々といます。まずは、長崎のグラバー邸で有名なグラバー・ツル。揚羽蝶の紋付を着ていて、まさに「蝶々夫人」のモデルです。もうひとつはオペラの原作であるジョン・ルーサー・ロングの「蝶々夫人」、これは日本にいた宣教師から聞いた話をもとにしています。(ちなみにイタリア映画で八千草薫が主演した「蝶々夫人」もあるとか!)この原作がデーヴィッド・ベラスコによって舞台化され流行ったものが、プッチーニの目にとまってオペラが書かれました。

他にもいくつも蝶々夫人の元になる話が残っています。フランスのピエール・ロティが日本に滞在して書いた「お菊さん」。お菊さんの元になったのが、大分県竹田市の狂女オカネの伝説が残るオカネさんです。

「お菊さん」は、アンドレ・メサジェがオペラにしていますが、別れの場面では、お金を渡すと、彼女が銀貨をはたいたり音をさせて数えていたりしており、悲劇ではありません。親戚が出てきて大騒ぎするようなオペラ「蝶々夫人」の場面は、原作ではなく「お菊さん」にあり、こちらを参考にしたのかもしれません。ちなみにオカネさんは17歳で結婚したそうですが、オペラ「蝶々夫人」では15歳で結婚して3年後に自害しています。

当時、鎖国が解けてやってきた外国人が、日本人女性といっしょになって、本国に帰るため別れるというような例はたくさんあって、それが欧米で物語になって紹介されたのですね。

忘れてはいけないのは、当時、ヨーロッパは日本ブームだったということです。ヨーロッパ公演をしていた、オッペケペーの川上音二郎、貞奴一座の舞台をプッチーニも観ています。そして、イタリアの大山公使の妻、大山久子を通して日本の音楽を色々と集めていました。「蝶々夫人」には日本のメロディがたくさん出てきます。例えば...

(服部さん、ヤマドリ登場の音楽を弾く)

実はこの久子さんは、かの三浦環さんにイタリア語を教えていたそうです。

005052.jpg ※講座の中で紹介された参考図書 『蝶々夫人』と日露戦争 ~大山久子の知られざる生涯(中央公論新社刊)

5.三浦環と歴代のバタフライ歌いたち

日本人として初めて本場ヨーロッパの劇場で「蝶々夫人」を歌ったプリマドンナ三浦環。プッチーニと腕をからめている誇らしげな写真が残っています。

(ここで三浦環の歌う「ある晴れた日に」の貴重な録音と映像を紹介)

「私はプッチーニ先生の前で歌った。それを日本で伝えなくてはならない」という思いが表れているようです。

「蝶々夫人」は日本人女性が主役なので、日本人歌手にとって、西洋でデビューして歌っていくためにはとても大事な役です。本場で歌った歌手としては、東敦子さん、林康子さん、渡辺葉子さん、そしてプッチーニ歌いというとご自身は違うとおっしゃるかもしれませんが、松本美和子さん(佐藤美枝子さんの師匠)もヨーロッパでは「蝶々夫人」を歌われています。(注:蝶々夫人は重い声の方が歌うイメージがあるが)こう見ていくと、実はそんなに強い大きな声という方々ではありません。

(中村さんがウィーンで研修していた時代のエピソードとして、たまたま2日間つづけて、「蝶々夫人」を林さん、松本さんが歌うということがあり、楽屋口のそばで待っていると、おふたりともものすごく大きな荷物をご自身で引いて楽屋入りされていて、とてもお声がかけられなかった。つまり着物や短刀などの小道具をすべて用意していた、という話をご紹介)西洋の人が想像する日本のセットや着物はどこの国のものか分からない適当なものだが、林さんも松本さんも、たとえプッチーニがそこまで想像していなかったとしても、日本人として美しくみせなくてはならないという、大変な思いで本場で歌っていらっしゃったのです。

レポート3に続く

室内楽ホールdeオペラ
佐藤美枝子のオペラ「蝶々夫人」

■日時:2021年3月20日(土) 14:00開演
■会場:第一生命ホール
■出演
佐藤美枝子(蝶々夫人) 井ノ上了吏(ピンカートン) 
与田朝子(スズキ) 久保田真澄(シャープレス) 
服部容子(音楽監督・ピアノ) 
中村敬一(演出) 山本郁子(語り)
■曲目
プッチーニ:歌劇「蝶々夫人」より(字幕付き)

詳細は こちら

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