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「メアリー・ジャヴィアン先生と語る『アウトリーチ』」を開催しました!
見えてきたアウトリーチの無限の可能性

2017年12月14日

12月1日、アウトリーチに関わる演奏家や大学関係者を対象にしたトークセッション&ワークショップ「メアリー・ジャヴィアン先生と語る『アウトリーチ』」を開催しました。

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講師のメアリー・ジャヴィアン先生(コントラバス奏者)は、コミュニティ活動担当ディレクターとしてカーティス音楽院で若い演奏家たちがティーチング・アーティスト※になるための指導をしている方です。

※ティーチング・アーティストとは、「芸術を教えるだけでなく、芸術を通して人を教育することを、仕事の一部としている人」(エリック・ブース著 久保田慶一監訳 大島路子訳 大類朋美訳 『ティーチング・アーティストTeaching Artist音楽の世界に導く職業』水曜社より)著者のブース氏は、ジャヴィアン先生がコミュニティ活動を始めた際のメンター(指導者、助言者)だったそうです。ちなみに今回の通訳は、この本の訳者のひとり大島路子さん。

参加する方に事前に募った質問に、「アウトリーチではどんな曲を演奏すべきか」という内容が多かったことを受けて、先生からは事前に、「ティーチング・アーティスト 音楽の世界に導く職業」を読むことを薦めていただき、さらにアウトリーチを考えるための「ワークシート」が送られてきました。

このワークシートで、楽器編成、実施場所、対象、時間、曲目などの項目に並んであげられていたのが、「エントリーポイント(導入)」。これについては更に詳しい資料をいただき、参加者の皆さんにも事前にお送りしたのですが、要は、「聴いてもらう曲の何がおもしろいのか、それを聴衆に見つけてもらうためのアイディア」のことです。

アウトリーチで取り上げる曲の「エントリーポイント」、そして「エントリーポイント」を感じるための「アクティビティ」(聴覚だけでなく、視覚、触覚など、五感の他の感覚を刺激するものがよい)を見つけよう、というのが今日のテーマです。

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まずは、参加者の中からオーボエ奏者の方に出てきていただき、いつも楽器紹介で演奏しているという「白鳥の湖」から「情景」を吹いてもらい、この曲の「エントリーポイント」を皆で考えました。例えば、クラシックをあまり聴かない方には、この音程の幅広さも「エントリーポイント」で、曲を聴きながらホワイトボードにマジックで音の高低を1本の線で書いてみることで、音域を聴覚だけでなく、視覚的にも示して感じることができる、という説明がありました。

次に演奏されたのは、この日の午前中、とある施設でアウトリーチを行ったグループによる、ドヴォルザークの弦楽四重奏曲「アメリカ」第4楽章。この曲からも色々な「エントリーポイント」が考えられることが分かりました。

弦楽四重奏を初めて聴く人の気持ちになって考えることが大事、ということで、先生が例として挙げたエントリーポイントは

・生き生きとしたリズムが繰り返し出てくる
・3人は弓で弾いているけど1人は指で弦をはじいている部分があった
・はずんでいるような部分から、スムーズな部分へ移っていった

など。「なるほど、こういうシンプルなことでいいのか」と、また少しエントリーポイントとは何か、が分かってきます。

参加者の皆さんが見つけたポイントのひとつに「会話しているよう」というのがありました。このエントリーポイントを基に、聴衆に参加してもらう「アクティビティ」をやってみることにしましょう、とジャヴィアン先生。参加者から4人前に出てきてもらい、弦楽四重奏の奏者の後ろに一人一人立って、演奏の間、目の前の奏者を観察。弦楽四重奏を「家族」に例えると、その奏者は家族の中の「誰」なのか、演奏を聴きながら考えてみました。

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第1ヴァイオリンの後ろに立った方が考えたのは「5歳の弟」、1人で自由に弾いているから、というのが理由です。それぞれ、第2ヴァイオリンはお姉ちゃん、ヴィオラはお母さん、チェロはお父さん、という答えが出ました。正解はないのですが、「この楽器は家族の中の誰だろう」と考えながら聴くことで、確かに弦楽四重奏の中でそれぞれの楽器が果たしている役割がよく見えてきます。

こうして実際に演奏したり聴いたりしながらエントリーポイントの例を教えてもらった後は、7,8人ずつのグループに分かれて、グループワークを行いました。グループごとに、ワークシートを埋める形で、アウトリーチを行う場所、対象者、演奏する曲とそのエントリーポイントと聴衆にしてもらうアクティビティを考えて発表しました。

蜈ィ菴・_MG_6736.JPGグループそれぞれ色々な案があり、実際に発表してみて聴衆の反応を感じたり、自分たちが聴衆の気持ちになって発表を見ることで、良かった点や改善点など、それぞれに気づきがあったのではないかと思います。

こういう考え方をぜひ続けていってくださいね、シェアをしたいのでいつでもメールをください、とジャヴィアン先生。確かに教わったのはアウトリーチの手法でなくて、考え方。エントリーポイントは無数にあり、五感を使ったアクティビティもいくらでも考えられそうです。この学びを実際のアウトリーチでどのように生かすか、考え方次第でいくらでも発展させられそうなワークショップとなり、あらためてアウトリーチが持っている可能性の大きさを感じることができました。

(たな)

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