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トリトン・アーツ・ネットワーク

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アーティスト・インタビュー

©成澤稔

エルデーディ弦楽四重奏団

クァルテット・ウィークエンド2018-2019
エルデーディ弦楽四重奏団

今年度から、「ベートーヴェン充実の中期とモーツァルト純化の晩年」と題した新シリーズを始めるエルデーディ弦楽四重奏団。第1ヴァイオリンの蒲生克郷さんに、演奏プログラムへの想いを伺いました。

ベートーヴェン充実の中期とモーツァルト純化の晩年

ベートーヴェンの後期をメインとしたシリーズを4公演終え、今年度からベートーヴェンの中期とモーツァルトの後期との組み合わせです。

ベートーヴェンの後期は弦楽四重奏曲のみに開かれた最晩年の作品群を見ることができますが、中期の作品群は初期に比べて、規模も内容も大変充実した作品が並び、弦楽四重奏曲に於いても同じことが言えます。ベートーヴェンの場合弦楽四重奏曲に於いては初期、中期、後期がはっきりと別れており、後期の四重奏曲を取り上げた後、中期の創作意欲満載の四重奏曲群を取り上げるのも意味のあることと思います。
一方、モーツァルトはベートーヴェンにも多大な影響を与えた弦楽四重奏曲を書きましたが、その評価、演奏頻度は「ハイドン・セット」の6曲に大きく軍配が上がるように思われます。ですが、その短い生涯の晩年に書かれた四重奏曲は決して「ハイドン・セット」に劣るものとは思いません。やや、地味ではありますが、簡潔さ、透明性など独自な世界を持っており、もっと愛好されて良いと思います。それらを組み合わせて演奏会ができれば、と思った次第です。

今まで取り上げていらしたベートーヴェン後期の作品と比べ、中期の作品にはどのような魅力がありますか?

後期の作品はそれまでの常識からどんどん離れてゆき、最後にまた古典的な形式に戻るといった晩年のベートーヴェンの軌跡を巡る旅が可能ですが、中期の作品はそれとは違い古典的な形式や書法の中にそれまでにはなかった拡大と充実が見られる曲が多いと思います。また後期の作品に見られる一種の難解さもありません。そのあたりは弦楽四重奏以外の分野とも共通しています。

そして、ふたりの作曲家の作品とともに選んだのは、イベールの弦楽四重奏です。

ベートーヴェンの中期とモーツァルトの後期と一緒に少し新しい曲も取り上げてみたいということで今回はイベールをやることにしました。できればドイツ系から離れて少しプログラムに変化を与えたいということで。
フランス近代といえばドビュッシーとラヴェルの四重奏曲がつとに有名ですが、実は他にも聴かれて然るべき名曲は存在します。イベールもその一つと考えています。活発にして軽さと洒落たセンスを持ち、弦楽四重奏にちょっとした新しさを見せています。

モーツァルトの後期からは、 「プロイセン王第1番」を選ばれました。

「プロイセン王」四重奏曲は題名の通りプロイセン王に献呈すべく、チェロを嗜んだ王を意識してチェロパートが書かれていてチェロが高音を演奏するため四声体が密集して書かれており、また、第1番は中でも主題の共通性や、各楽章の簡潔性など、後期の特徴がよく現れていると考えています。今回からのシリーズの最初にふさわしいかと思います。

1989年の結成から30年近くが経とうとしています。結成当時と比べ、エルデーディ弦楽四重奏団としての変化はありますでしょうか?

お互いの考えが以前よりわかるようになっているのは確かではないでしょうか。練習の時の意見交換等はより活発になっていると思います。細かいところまで詰めていくのはアンサンブルには欠かせないところですから。

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