第一生命ホールの「クァルテット・ウィークエンド(SQW)」シリーズでおなじみ、日本が誇る常設の弦楽四重奏団クァルテット・エクセルシオ(以下エク)が、昨年度からスタートした「アラウンド・モーツァルト」。今回はクラリネットの澤村康恵さんをゲストに、モーツァルトとその同時代の作曲家たちに迫ります。澤村さんと、エク第2ヴァイオリン山田百子さんに聴きどころをうかがいました。
山田:同世代で活躍している仲間と演奏したいと、初共演をお願いしました。
澤村:このクラリネット五重奏曲は本当に名曲ですが、モーツァルトとクラリネット奏者シュタードラーの出会いがなければ生まれませんでした。この後、ウェーバーやブラームスが五重奏曲などを書きましたし、今オーケストラの中にクラリネット・パートがあるのも、シュタードラーに会ったモーツァルトが素晴らしいクラリネット作品を書いてくれたからこそ。
山田:美しい第2楽章は、一筋光が差しているかのようなクラリネットのソロに、弦楽四重奏は伴奏のようなシンプルなつくりですが、何度演奏しても飽きることない不思議な曲です。
澤村:シュタードラーが作曲した二重奏曲も聴いていただきます。私も今回初めて楽譜を見た、めずらしい曲。シュタードラーは弟もクラリネット奏者でしたから、2人で演奏したのかもしれません。
山田:2番クラリネットは人の声に一番近いと言われているヴィオラが担当します。
プログラムは、「フィガロの結婚」序曲でスタートします。ウィーン楽友協会資料館のオットー・ビーバさんから楽友協会に伝わる弦楽四重奏版の楽譜をいただきました。次に、モーツァルトの少し後の時代に生きたシューベルトの弦楽四重奏曲第6番を。シューベルトは、傾倒したベートーヴェンのようには弦楽四重奏曲を書けなくて、この曲は、敬愛していたモーツァルトの影響を受けて書かれたと言われています。そして、やはりモーツァルトのしっかりした弦楽四重奏曲を聴いていただこうと、「狩」を入れました。
昨年度の「アラウンド・モーツァルト」第1回は、療養していたメンバーが戻ってきて、初めてお披露目できた演奏会で感慨深いものがありました。その間、3人だけで演奏をしたり、代演の方に刺激をいただいたり、私たち自身も新たな視点でエクを見ることができました。元の4人に戻ってからはベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲演奏があり、そして夏にはドイツの音楽祭に招かれるなど、みんなで演奏できる喜びを噛みしめながら活動しています。またひとつのグループになったエクを、ぜひ第一生命ホールで聴いていただきたいですね。
[聞き手/文 田中玲子]