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トリトン・アーツ・ネットワーク

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アーティスト・インタビュー

小山実稚恵

室内楽の魅力ブラームス 第5回
~音楽家たちとの友情II

日本を代表する人気ピアニスト小山実稚恵さんが「室内楽の魅力~ブラームス」に登場、名手たちが揃うアルティ弦楽四重奏団と初共演します。

ブラームスでアルティ弦楽四重奏団と共演

 

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小山:アルティ弦楽四重奏団としては初共演ですが、メンバーの皆さん4人とは、それぞれ昔から演奏してきました。豊嶋さん上村さんとは本当に久しぶりの共演ですので、大変楽しみです。矢部さん川本さんとは、いろいろなところで共演の機会があります。矢部さんとは、東京都交響楽団のコンサートマスターとしてご一緒することも多く、昨年の私のデビュー30周年記念演奏会でも共演していただきました。今回、皆さんと演奏させていただけること、本当にうれしく思います。


その30周年記念演奏会のすぐ後に、矢部達哉さんが感嘆していらっしゃいました。小山さんには、演奏中に自分が考えていることが何でもお見通しだと。

小山:矢部さんの音を背中越しにお聴きするわけですから、もちろん分かりますよ(笑)。矢部さんは、コンサートマスターとして演奏される時、とにかく全てが見えていらっしゃる。全てを全身で感じる、すごい感性をお持ちだと思います。「別の選択肢もあるけど、今はこちらの方がいいから、コンサートマスターとしてこう演奏しよう」と瞬時に判断して演奏されていることが、弾きながら私にも分かるので感激するわけです。テレビで、天才的な卓球選手、伊藤美誠ちゃんの試合を見ていると、彼女の集中している時の目と矢部さんの目が私の中で重なってしまいます。相手をよく見ていて、勝負強いでしょう?ここぞ!という時にもの凄く集中して、冷静に状況を見極められる。凄いです。


スポーツ観戦がお好きな小山さんならではの観察力ですね。今回は「ブラームスの魅力」シリーズの第5回にあたるコンサートですが、ブラームスはお好きですか。

小山:ブラームスの室内楽は、なぜか聴くほどに好きになります。なぜでしょうね。好きな絵や好きな映画も最初に見たときには見えてなかったこだわりが2度目3度目と回数を重ねる毎に見えてくる、そんな感じですよね。何回か聴くうちに、いよいよ好きになる。決して口ずさみやすいわけではないのですが、それは、ブラームスの作品は、その時に鳴っているすべての響き、縦の響きがあってこそ、はじめてブラームスの音楽になるから。他の作曲家の作品では、メロディと和声が分かりやすいものも多いですが、ブラームスの場合は、旋律と思える部分だけ歌っても少し違和感があるわけです。室内楽ならそれぞれの楽器の響きの総音、ピッツィカートや和声を思い浮かべると素晴らしいものになります。すべてが一体となった時にブラームスの香りが醸し出される。そこが、なんともいえずいいのですね。
ブラームスはピアノの名手でもありましたが、一般的なピアニスティックな作品とも違います。ブラームス独特の分厚いピアニズムです。どんな楽器で弾いても、じっくりと聴かせる。情熱を秘めていて、懐が深く、厚みがある。男性なりのナイーヴさです。女性の私には難しいけれど、すごく好きですね。
このピアノ五重奏曲は、ブラームスの手によるピアノ二重奏版もあるのですよね。昔、野平一郎さんと演奏したことがあり、ピアノ2台で演奏するのもおもしろいのですが、やはり、この弦楽器との感じは最高ですね。


ピアニストとして、弦楽器と共演する室内楽の面白さは、どのようなところにありますか。

小山:ピアノはいったん音を出したらあとは減衰してしまうので、物理的には、出した時の音が一番強く、あとは弱くなってしまいます。でも弦楽器は、出し始めの音からだんだんと強くもっていくことができますよね。ピアニストとしては、そういうことができたらと憧れます。そう思って弾くと、実際に物理的にはできるはずはないのですけれど、ふっと入ってぐーっと(音を伸ばすことが)、気持ちの上でできるような気がするのです。弦楽器が実際にそういう音を弾いていると、ピアノもその音をもらえるような感覚です。ひとりで弾いていると、どうしてもそういうイメージが枯渇してしまいそうになるのですが、弦楽器と一緒に演奏していると、ある音から次の音へのイメージが強まる。そんな時には嬉しくなって、また「ああ音楽っていいな」「ピアノには、まだまだ可能性があるんだ」と思いますよね。
音程もそうですね。ピアノはひとつの鍵盤で出る音はひとつ。でも弦楽器は自分で音程を作りますから音程に幅があり、聴いていて心地よいものです。音程というよりそれぞれの楽器の持ち味かもしれません。特にブラームスのピアノ五重奏曲の出だしなど、弦楽器とユニゾンで鳴った時、ピアノでひとり練習していた時と全く違って、明らかにいいのです。次の音への持っていきかたも違う。最初のド-ファという音も、弦楽器で弾くといかにも違いますよね。ピアノは決まった音しか出ないはずなのですが、意識することはすごく重要ですね。ピアノで演奏していても弦楽器の音程に近づきたいという思いは、ものすごくあります。


以前小山さんにクァルテット・エクセルシオと、第一生命ホールでシューマンのピアノ五重奏曲を演奏していただいた時、ピアノなのに、音の伸びや、音程を弦楽器に合わせていらっしゃるように聴こえて、驚きました。

小山:室内楽の時はいつもそうなんですけど、実際に一緒に演奏する前に、共演者の皆さんひとりひとりがこう弾くのではないかしらと想像しながらピアノを弾きます。よく知っている演奏家の方なら、ボウイングはこうかな、と頭の中で音を鳴らしながら楽しんでいます。ピアノがない時も、移動の時間がたくさんあるので、新幹線の中などでもよくやりますね。空想癖があるので(笑)。


160925_Brahmus5_interview2.jpgアルティ弦楽四重奏団は、第1ヴァイオリンが固定でなく、曲によって豊嶋さんと矢部さんで弾き分けていらっしゃいます。

小山:それではリハーサルまでは、ドヴォルザークもブラームスも、それぞれ第1ヴァイオリンが豊嶋さんの場合と、矢部さんの場合と空想して、2回ずつ楽しみたいと思います(笑)。おふたりともすばらしいですから、いずれにしても楽しみですね。
ブラームスとドヴォルザークの友情がテーマのコンサートですが、演奏する私たち音楽家の側も、お互いが尊敬し、深いところで信頼しあっている友だと思います。名曲2曲で、密度の濃い午後を楽しんでいただければと思います。



私のお気に入り 

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猫のララちゃん。4歳の女の子です。
これまでにもオス猫2匹を飼いましたが、この子は私と似たのか(笑)身体がとてもやわらかいんですよ。これまで飼っていた子に較べると何をしてもなすがまま。こんなに抱っこできる猫は初めてです。順応性がとても高くて、お腹を壊したことも1回もありません。あんこや水羊羹が好きな子なんてめずらしいですよね。