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トリトン・アーツ・ネットワーク

第一生命ホールを拠点として、音楽活動を通じて地域社会に貢献するNPO法人です。
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アーティスト・インタビュー

© Kiyotaka Saito

仲道郁代

音楽のある週末 第10・11回
仲道郁代~ショパンの世界~

「音楽のある週末」シリーズでは、5月と6月、2回にわたって「仲道郁代~ショパンの世界~」をおおくりします。ただショパンを演奏するだけではない、特別な企画の内容を語っていただきました。

時代を超えて、ショパンの世界を。
現代の楽器では失われてしまった何かを求めて・・・。


ショパンの時代の楽器と現代のピアノとの聴き比べ

第1回では、ショパンの時代のフォルテピアノ「プレイエル」と、第一生命ホールのピアノ「スタインウェイ」を両方で、ショパンのピアノ曲を演奏していただきます。

仲道:今回の「ショパンの世界」は、どちらも聴きものですが、まずはプレイエルと現代のピアノの聴き比べです。プレイエルを弾くと、ショパンがどのような音楽を書きたかったか、とてもよく分かります。ショパンが弾いていたころのピアノ(フォルテピアノ)から、現代のピアノになるまで、実はピアノは改良を重ねています。大きなコンサート会場で演奏するために、力強さや均一性が求められ、改良されて獲得したこともあるのですが、逆に失われてしまったこともあるのです。現代の楽器では失われてしまった何かを、プレイエルでは聴くことができます。それが、ショパンの音楽を弾く時にとっても大事な部分だと思うのです。

両方を一度に聴けるのがいいですね。

仲道:2台のピアノを並べて同じ曲も弾きますから、一目(耳?)瞭然(笑)。「ああ、なるほど」と思っていただけると思います。また、第一生命ホールのサイズが、プレイエルをお聴きいただくのにちょうどいいのです。細かなニュアンスをぜひ聴いていただけたらと思っています。

室内楽版 ピアノ協奏曲

第2回では、ピアノ協奏曲を、弦楽四重奏と一緒に演奏していただきます。

仲道:これは目からうろこですよ。ショパンのピアノ協奏曲は、もちろんオーケストラと何度も弾いてきましたが、この弦楽四重奏版を演奏してみて、これがこの曲の本当の姿ではないかと思いました。オーケストラと演奏する時とはまったく別物、「室内楽」なのです。ピアノが「私がソロです」と、最初から最後まで頑張って弾かないのです。通常は、ショパンのピアノ協奏曲では、ピアノだけが華やかにソロを演奏して、オーケストラパートは伴奏で、つまらないと言われています。ところが、弦楽四重奏版では、あるところでは弦楽器の方が美しいメロディーで、ピアノの細かな音はそのバックグラウンドの空気感を作るものであり、あるところではピアノが前に出て、5つの楽器がまるですてきな織物を織っているようにメロディーが絡み合うのです。ピアノと弦楽四重奏が、対等な関係でひとつの音楽を創ります。本当に目からうろこで、耳からもうろこですよ(笑)。

こちらはスタインウェイで演奏するのですね。

仲道:そうです。弦楽四重奏の演奏家もモダンの楽器ですから。ただこれまでプレイエルを弾いてきて、協奏曲もプレイエルで弾いてCDも録音しましたので、その感覚は私の中にあって、それまでのショパンの弾き方とはかなり変わってきました。ショパンがたぶんこういった歌わせ方、こういった音の使い方を望んでいたのではないかと推測できるところが、あったので、それは現代の楽器でもなるべく活かして弾きたいと思います。ピアノが教えてくれることがたくさんあります。

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「実はショパンの時代のフォルテピアノを買ってしまったの。もうすぐパリから届くのです」と本当に目を輝かせて幸せそうな笑顔の仲道さん。音楽が大好き、という思いが舞台から伝わってくるのが仲道さんの演奏会の一番の魅力かもしれません。2回にわたる「仲道郁代~ショパンの世界~」をたっぷりとお楽しみください。

[聞き手/文 田中玲子]