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トリトン・アーツ・ネットワーク

第一生命ホールを拠点として、音楽活動を通じて地域社会に貢献するNPO法人です。
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レポート

基本情報

日時 2017年2月14日(火)10:30~11:15/11:30~12:15
出演 杵屋五司郎/日吉静永(三味線) 内田ゆう子(ピアノ) 盧 慶順(打楽器)
概要 実施会場:中央区立常盤小学校音楽室
対象者:小学4年生
人数:12名
助成等:文化庁「平成28年度劇場・音楽堂等活性化事業」

レポート

中央区立常盤小学校は明治6年創立で、場所も日本橋三越や日本銀行に近く周りにビルが立ち並ぶ中にあり、関東大震災後建てられた校舎は東京都選定歴史的建造物にも指定されている歴史ある小学校です。

会場は、趣がある丸みの帯びた天井で響きの良い音楽室です。3時間目、4年生12名が初めて三味線を弾く体験をし、4時間目の冒頭には3年生22名の前で「さくら さくら」の冒頭部分を披露。その後プロの演奏家による三味線と打楽器の演奏、三味線・ピアノ・打楽器の協奏曲を聴くコンサートの二部構成です。三味線の演奏体験と、プロ演奏家の方々の演奏を身近に聴き、児童に日本の伝統音楽に興味関心を持ってもらうアウトリーチで、保護者の方も4名ほど見学されました。

まず3時間目、12名の4年生児童各自の前には机の上に三味線、手ぬぐい、膝あて、撥、左手の指掛そして三味線体験の教則用パンフレットが用意されています。

杵屋五司郎さんの指導のもと、初めて三味線に触れる児童達への三味線ワークショップが始まりました。
まず左手に指掛を着け、胴を右膝の上に置き…と、演奏する姿勢と三味線の持ち方を教えます。特に左手の棹は耳元まで上げることと背筋を伸ばすことを教えました。
児童達は三味線の意外な重さに「こんなに重いの」「もっと小さいかと思った」と言っていました。

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杵屋さんは、糸を撥ではじき、実際の音を出してみせました。
しかしながら、児童は初めてなので、両手のバランスを取りながら左手に棹を持ち、右手の撥で糸を弾くことにはとても戸惑っていました。
児童たちそれぞれに日吉さん、蘆さん、スタッフ、音楽の先生、担任の先生がつき構え方、撥の弾き方、弾くときの姿勢等々を教えました。
撥で糸を弾いて音を出してみた後は、パンフレットに沿って、三の糸、二の糸、一の糸をそれぞれ解放弦で、また糸をシールが貼ってある場所で押さえて弾き、色々な音階の音を覚えていきます。そして「さくら さくら」のメロディを、どの糸でどこを押さえるのか考えながらさらっていきます。
児童達は両手のバランスが取り難い様子で、棹が下がり易く(ギターを弾くようになったり)、撥に気を取られると左手の指が疎かになったり、とても最初はとても混乱していました。
しかしながら、時間一杯まで生徒達は杵屋さん、日吉さん、蘆さん、スタッフ、先生方の助けを借りながら一生懸命に練習して何とか「さくら さくら」の通しまでこぎつけました。
とにかく生徒達は慣れないながらも真剣で何とか覚えようとする熱意がひしひしと感じました。
この間、杵屋さんは度々生徒達の習熟度を褒めて励まし、4年生の三味線ワークショップが終わりました。

<4時間目のプログラム>
一.4年生の発表会
3年生22名を前にして、4年生12名による「さくら さくら」の演奏発表をしました。一生懸命に弾いている様子を3年生も真剣に聴き、演奏が終わった時拍手で讃えました。

その後は、3、4年生がそろって三味線コンサートを鑑賞しました。
二.三味線の演奏
●本調子を感じてみよう(三味線:杵屋さんと日吉さん、打楽器:蘆さん)
一曲目:「大薩摩幕間三重」
体操の白井選手の編み出した技が「しらい」と呼ばれているように、それと同様、「大薩摩」も三味線の技を編み出した人の名がついたこと、そして歌舞伎の幕間に演奏されことを教えました。杵屋さんは立って演奏しその迫力ある撥さばきのすばらしい演奏に生徒達は吃驚していました。

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二曲目:「虫の合方」
今度は杵屋さんと日吉さんとのお二人で「チンチロリン」と奏でる静かに虫の鳴き声のような演奏です。

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三曲目「佃の合方」、四曲目の「新内の合方」と三味線の二重奏が続き、生徒達は静かに神妙にその音を聴いていました。

●二上がりをかんじてみよう
地元のお祭りとして児童も勉強していた「神田祭」の曲を演奏。ここで蘆さんの太鼓が加わり祭りの騒がしさとワクワク感が生徒達に十分伝わっていました。

●三下がりをかんじてみよう
杵屋さんの唄い、蘆さんの掛け声と太鼓の素晴らしい音色も入った「越後獅子」の演奏で、三下がりの音調を感じてもらいました。

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そして「勧進帳」の華やかな演奏を聴いてもらい、盧さんによる太鼓のレクチャーコーナーに続きます。締太鼓は真ん中に撥皮という鹿の皮が張ってあり、それ以外の面は牛の皮が張ってあることや、鼓は張ってある縄を緩めたり締めたりして色々な音をだすことなど説明がありました。

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三、三味線とピアノの演奏
通常は和楽器のオーケストラとで演奏する長沢勝俊作曲の「三味線協奏曲」を、今日は三味線、ピアノ、打楽器で演奏しました。

第一楽章は三味線だけのカデンツァがあり迫力満点でした。
第二楽章は杵屋さんが沖縄風と言われる通り、ゆったりとした曲想です。
第三楽章は杵屋さんの迫力のある撥さばきと力強い掛け声、そして打楽器が入りテンポが良く歯切れの良い三重奏でした。

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三味線、打楽器、ピアノと、日本の楽器と西洋の楽器のコラボレーションの面白さに児童も真剣に聴き入っていました。
最後に、杵屋さんは児童達に色々な楽器で演奏してみて楽しんでくださいと言っていました。

(サポーター 柴﨑康久)

プロフィール

杵屋五司郎  きねや ごしろう(三味線)
東京藝術大学音楽学部卒業。杵屋五三吉(杉浦弘和)氏に師事。伝統音楽の長唄、現代邦楽の両方で演奏活動をすると同時に、作曲にも取り組み、国内外で活躍。
2002年より東京芸術大学非常勤講師、2001年より昭和音楽大学講師、2008年より九州大学講師、2005年より松徳学院特別講師。長唄東音会、日本音楽集団、如葉会に所属。簑里会主宰。
日吉静永  ひよし しずえ(三味線)
東京藝術大学音楽学部邦楽科卒業。稀音家六静世氏に師事。日吉小静氏に師事。人間国宝日吉小三八氏より日吉静永の名を頂く。現在 昭和音楽大学非常勤講師、長唄演奏会「道」、日吉会に所属。
盧 慶順  ろ きょんすん(打楽器)
東京藝術大学音楽研究科邦楽囃子専攻(博士課程)修了。同大学准教授。高畑勲監督『かぐや姫』録音等、古典・現代の邦楽囃子演奏家として活躍する他、新作(長唄、清元、箏曲など)の作調も手がけている。歳松会会員。日本音楽集団団員。中国、ロシア、モンゴル、韓国等の海外公演も多数ある。
内田ゆう子  うちだ ゆうこ(ピアノ)
国立音楽大学ピアノ科卒業。ニューヨークにてジャズアンサンブル、ジャズピアノを学ぶ。帰国後、邦楽と洋楽とのコラボレーションによる演奏活動も意欲的に行う。 2006年に音楽仲間4人と[楽譜仕事人PAG] を設立。現在は幅広いレパートリーで各地でのコンサート、作・編曲家、ピアノ講師としても活動している。